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JapanRx / 長時間作用型の注射可能な薬物がHIVを予防治療する取り組みを強化

長時間作用型の注射可能な薬物がHIVを予防治療する取り組みを強化

科学者たちは、HIVが細胞に侵入するのを阻止する注射薬を開発しました。

彼らは新薬によりより少ない副作用で、潜在的に感染から長期的な保護を提供すると言います。

人間以外の霊長類でテストされたこの薬物は、最終的にはウイルスの予防または治療に現在使用されている併用薬物「カクテル」療法の成分に取って代わるか、補足することができます。

ユタ大学の健康科学者は、国立アレルギー感染症研究所(NIAID)、ボストンのベスイスラエルディーコネスメディカルセンター、およびNavigen Inc社の研究者と共同で研究を主導しました。

「これは予防と治療の両方のための刺激的な新しいHIV治療の選択肢であり、他の承認された薬物と比較してユニークな作用機序があります。」

と研究の筆頭著者であるマイケルS.ケイ博士は述べています。

「それは、薬物耐性に苦しむ患者だけでなく、長時間作用型で注射が可能な抗HIV薬物カクテルから恩恵を受ける患者を助けることでの大きな可能性を秘めています。」

この研究は全米科学アカデミーのプロシーディングス(PNAS)に掲載されています。

世界保健機関によると、2019年に世界中で約170万人が新たにHIVに感染しました。

現在、3800万人以上がこの感染症とともに生活しています。

いわゆる「薬物カクテル」と呼ばれる併用抗レトロウイルス療法(cART)は、こういった患者の生存率と生活の質を劇的に改善しましたが、費用がかかり、深刻な副作用もよくみられ、患者は毎日薬を服用する必要があります。

さらに、HIVは頻繁に変異するため、薬剤耐性は常に課題であり、研究者は常により強力な併用療法を生み出すための新しい作用メカニズムを備えた新薬を模索しています。

この新しい研究で、研究者らは、めったに変異しないHIVの融合機構の重要なポケットを標的とする“Dペプチド”に基づく、CPT31と呼ばれるユニークな薬物をテストしました。

D-ペプチドは、天然に存在するペプチドの鏡像です。左手と右手と考えて想像してみてください。

天然ペプチドの構成要素と全体的な構造とDペプチドは左手と右手のごとく似ています。

そのため、CPT31と他のDペプチドは体内で分解されません。

したがって、それらは天然ペプチドよりもはるかに長持ちし、長時間作用する注射可能な製剤に特に適しています。

 

「D-ペプチドは体内での耐久性に加えて、免疫系によってほとんど無視され、従来のペプチドやタンパク質の薬物でよく見られる副作用である免疫反応を防ぎます。」

とCPT31を共同開発し、臨床試験を管理しているソルトレイクシティの企業、Navigen Inc社の技術および戦略担当シニアディレクターであり、研究の共著者であるブレット・ウェルチ氏は述べています。

「D-ペプチドに対しての私たちの希望は、CPT31がより低い用量でより長いウイルス抑制を提供し、副作用を低減することです。」

CPT31がHIV感染を防ぐことができるかどうかを確認するために、ケイ博士らは、SHIVと呼ばれるサルとヒトのハイブリッド型のHIVウイルスに晒される数日前に、健康なサルへ薬剤を注射しました。

サルは、人間が、通常遭遇するよりもはるかに高いSHIVへの曝露から完全に保護され感染の兆候は全くありませんでした。

その後、科学者たちは臨床試験に役立つ情報として、完全に保護するために必要なCPT31の最小用量を特定しました。

「最初のHIVへの曝露には通常比較的少量のウイルスが含まれるため、この薬を単独で使用してHIV感染を予防できると私たちは考えます。」

とケイ博士は述べています。

 「この研究では、世界中に出回っているHIV株の大部分がCPT31によって強力にブロックされることを示しました。」

しかし、何十億ものウイルスのコピーが体内で循環している場合、病気の後期のステージではどうなのでしょうか?

それを調べるために、研究者らは未処理のSHIV感染症と高ウイルス量のサルにCPT31を与えました。

 30日間にわたって、この薬は血流中のSHIVの存在を大幅に低下させました。

しかし、確立された感染症を単一の薬物で治療するときに典型的に観察されるように、ウイルスレベルは、薬物耐性のために2週間〜3週間でリバウンドしました。

最後に、研究者らは、cART薬物カクテルのサルへの投与が中止された後のウイルス抑制を維持する薬物の能力についてテストしました。

cARTはSHIVを検出不可能なレベルまで低下させますが、ウイルスは治療を中止すると急速にリバウンドします(人間にも同様に見られます)。

この研究では、CPT31自体が数か月間(薬の投与が中止されるまで)ウイルスの検出不可能なレベルを効果的に保ちました。

「そのような簡素化された「維持療法」は、より費用効果が高く、服用が便利で、副作用の少ないといった、ウイルス制御のための患者にとっての新しい選択肢となるでしょう。」

とケイ博士は言います。

臨床試験と並行して、Navigen社はCPT31の長時間作用型注射製剤を開発しており、3か月に1回の薬剤の注射のみでの治療を目指しています。

「長時間作用する注射が可能な製剤は、維持するのが困難である、現在の毎日の投薬計画と比較して、患者と医師の両方に非常に好まれると思います。」

とウェルチ氏は述べています。

「さらに、このような製剤によって提供される安定した治療薬のレベルは、毎日の薬の飲み忘れによる薬剤耐性のリスクを軽減するだけでなく、副作用をも軽減します。」

今年後半に予定されている次の治験では、CPT31が人間に対して安全で効果的であるかどうかを判断します。

 ケイ博士は、人間の臨床試験過程を完全に終了し、その後のFDAの承認を得るまでには数年かかる可能性があると述べています。

 

 

【以下のリンクより引用】

Long-acting, injectable drug could strengthen efforts to prevent, treat HIV

Medical Xpress