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JapanRx / 尿路感染症検査では、大勢の女性の感染症が見落とされている可能性

尿路感染症検査では、大勢の女性の感染症が見落とされている可能性

ピッパ・アンダーソン氏は、腎臓の痛みで目が覚め、膀胱が常にいっぱいで、トイレに行く時に不快感を覚えた時、これが尿路感染症の兆候であることに気づきました。

尿路感染症検査で陽性反応が出た後は、かかりつけの医師より通常の治療法である3~5日間の抗生物質が処方されました。

しかし、症状は良くなりませんでした。
その後6週間の間、アンダーソン氏は何度も医者を受診し、さらなる抗生物質の処方を受けましたが、それでも改善しませんでした。

そして、再び標準的な検査法である試験紙法による尿路感染症検査を受けると、結果は陰性でした。

ピッパ氏は、悪夢のような状況に陥りました。
強い痛みがあるのに、診断も受けられず、効果的な治療法が無いのです。

「最終的に、”これが結果なのだから仕方がない”と言われました。」と彼女は話します。

「何度医者で検査を受けても、尿路感染症ではないとの結果でした。そのため、他に出来ることはありませんでした。」

アンダーソン氏はこのような状況下にいるのは自分だと思いましたが、同様の経験をする女性はたくさん存在します。
尿路感染症の症状を何年も経験していても、標準的な検査では診断が下りず、また標準的な治療法では症状が改善しません。
症状は頭の中の想像に過ぎないと言われた女性もいます。

しかし、世界中の研究者による一連の新しい研究では、彼女たちが経験していることは真実であり、不足があるのは標準的な検査の方であるとの指摘がされています。

こうした研究が正しいならば、尿路感染症を患う、全体の80%にも上る大勢の女性が見落とされていることになります。

「現在尿路感染症に使われている検査は原始的なものであり、正しく検証されたことは一度もありません。」と、慢性尿路感染症の研究における世界的主導者であるジェームス・マロン-リー教授は述べています。

「70年前に使われていた検査と同じものを未だに使用しているのです。」


- 検査が女性を見落としている可能性
最近まで、尿路感染症はクリニックで採取した尿のサンプルを使用する”試験紙法”、もしくは尿サンプルを研究所に送り、24時間~48時間にわたり検査を行う尿培養検査によって検査されてきました。

しかし新しい研究では、こうした検査では50~80%の尿路感染症が見落とされている可能性があることが指摘されています。

これらの”見落とされた女性”は、検査で既に尿路感染症の可能性は除外されているため、それ以外に原因があると信じながら、原因不明の痛みを何年も抱えることとなる可能性があります。


- 現状
標準的な尿路感染症では、膀胱内で細菌感染が起こり、この感染は尿から検出できることがあります。
このケースでは、試験紙法が効果的であり、女性は適切な治療を受けることができます。

しかし、ジェームス・マロン-リー教授の研究室による研究を含めた一連の新しい研究では、膀胱内壁の細胞内に最近が存在する可能性が示されています。
こうした細菌は表面に現れないため、尿から検出することができません。

感染を除去するために使われる短期間の抗生物質はこうした細胞を貫通することができず、これは標準的な治療法では効果が無いことを意味しています。

マロン-リー教授は、こうした女性は異なる種類の尿路感染症、慢性尿路感染症を患っていると言います。


- 隠れた尿路感染症を発見する
では、検査で陰性の結果が出たものの、実際は尿路感染症を患っている人を、どうしたら識別できるのでしょうか?

「尿路感染症の背後にあるものを理解するため、私たちは19世紀後半と20世紀初頭当時の原則に立ち返り、何を持って尿路感染の有無を識別しているかを考えました。」

「それは、尿中の膿細胞と白血球でした。」

尿中に浮いているこれらの白血球は、一般医が顕微鏡を用いることで検出することができます。


- 抗生物質耐性は?
殆どの尿路感染症に対する治療法としては、3~5日間の抗生物質が用いられます。
しかし慢性尿路感染症の場合、異なる治療計画が必要となります。

マロン-リー教授は、第一世代(既存の薬で最も古いもの)の尿路感染症用抗生物質を最大用量で使用する治療法を採用しています。
これにより隠れた細菌まで到達する上、作用対象が限定されているため、薬物耐性をあまり引き起こすことがありません。

この抗生物質は内壁に埋め込まれた細菌を殺菌するため長期的に投与され、これは6年間にも及ぶこともあると教授は話します。

多くの医師は、薬物耐性を引き起こすと考えるため、高用量の抗生物質を長期間処方することを恐れます。

しかし研究では、実際薬物耐性は低用量の抗生物質を繰り返し使用することにより引き起こされることが示されています。
これはまさに、慢性尿路感染症が未診断である女性が陥る治療法です。

「低用量の抗生物質を繰り返し短期間使用する、特に異なる抗生物質が使用されると、患者の抱えている問題を解決することなく、薬物耐性を引き起こします。」と、マロン-リー教授は言います。

マロン-リー教授による治療を受けた624人の女性を10年間調査した大規模な研究では、深刻な副作用を報告したのは1人の女性だけでした。

オーストラリアの慢性尿路感染症団体(Chronic UTI Australia)のスポークスマンであるイメルダ・ウィルデ氏は、4分の1~3分の1の患者が最初の短期抗生物質治療に失敗し、長期的な苦痛を強いられていると言います。

「医者には、抗生物質の処方量を削減するよう多くの圧力がかけられています。この圧力が、慢性尿路感染症の治療をより難しくしているのです。」と、彼女は話します。


- 事実、もしくは理論?
オーストラリア泌尿器科学会のアレクサンドラ・モワット氏は、慢性尿路感染症の研究は興味深いものの、また”確立されたものではなく、理論にすぎない”と述べています。

「現状、多くの人が慢性尿路感染症が存在することに同意するでしょう。ただ、原因についてさらなる研究を行う必要があるのです。」

モワット医師は、検査で陰性反応が出た女性を突き返さないことが重要であることに同意しています。

「私たちは、尿路感染症の症状があるものの検査結果が陰性であった人に関して、より慎重な判断を下す必要があります。」

「施設の整ったクリニックでは、私たちは微生物学者に、淋病、クラミジア、マイコプラズマなどの、培養するのは難しいものの膀胱症状を引き起こすことが知られる特定の細菌のDNAを探すよう依頼しています。」


- ピッパ氏の人生を変えた瞬間
アンダーソン氏の人生は、マロン-リー教授との出会いにより変わりました。

「教授と会って直ぐ、症状は良くなると伝えられました。」と、彼女は当時を振り返ります。

治療は単純であり、1種類の抗生物質が2年間投与されました。
アンダーソン氏は、治療を開始して4カ月目までに”痛みがはるかに減少”し、2年目の終わりには感染は完全に除去されました。

また、彼女が何年も試みていた妊娠がついに成功しました。

「良くなるまで2年かかりましたが、今はとても調子が良いです。」と彼女は話しています。

出典: 2019年6月25日更新 ABC News『UTI tests could be missing a huge number of women with infections, experts say』(2019年6月25日に利用)
https://www.abc.net.au/news/2019-06-25/uti-tests-missing-women-with-infections-antimicrobial-resistance/11139598