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JapanRx / HIV感染におけるホルモン避妊の役割

HIV感染におけるホルモン避妊の役割

サハラ砂漠より南のアフリカ諸国においてのHIV感染者は約75%が女性です。
この男女比の不均衡には多くの要因があります。
この要因には、性別に基づく社会的格差や世代間の性的パートナーシップの有病率が高いことなどが含まれています。
しかし、研究では、一般的にこの地域で使用されるホルモン避妊薬の特定のタイプも一つの要因となる可能性を示唆しています。
デポプロベラのようなプロゲスチン避妊注射は、便利で効果的なため、サハラ砂漠以南のアフリカでは特に人気があります。
毎日ピルを服用する代わりに、3ヶ月に一度、デポプロベラ注射を受けるというものです。

しかし、研究では、この特定のタイプの避妊方法を使用している女性がHIVの影響を受けやすいことを示唆しています。
最近、アフリカで行なわれた大規模な研究では、プロゲスチン注射を使用していた女性は、ホルモン避妊薬を何も使用していない女性よりもHIVにかかる可能性が高かったのです。
この種の研究では、避妊法の特定のタイプが、実際に感染症への感受性をより強くするということは証明できません。

避妊薬により女性が感染症に対して本当に影響を受けやすくなるのかを確認するため、これらの薬物が、実際の感染から体を守るシステムにどのように影響するかを確認する必要があります。
このような研究は、ヒトで行うことが困難であるので、我々はマウスモデルで探求することにしました。

【マウス実験から得られたこと】
我々は、デポプロベラまたはレボノルゲストレル(LNG)、ホルモン子宮内避妊器具に使用されるプロゲスチンは、生殖器の粘膜バリアに影響を与えるかどうかを検証するために、マウスを使用していました。
この粘膜バリアは、ウイルスや細菌の身体の組織への感染から守るための遮断壁の役目をします。言いかえれば、感染に対する第一線の防御壁なのです。
生殖管組織の表面の上皮細胞はこのバリアの重要な一部分です。
この部分が、病原体が組織を貫通し、感染に至ることを困難にする接着分子の役割をしっかりと保っています。

しかし、我々はデポプロベラやLNGで治療されたマウスが、これらの接着分子のいくつかのレベルが低いということを発見しました。
これは、生殖器上皮細胞がしっかりと保持されておらず、組織がより透過性になり、ウイルスがより簡単に侵入することを意味します。

我々の研究では、これらの避妊薬が感染症に対するマウスの感受性を高めていることを示しています。 しかし、透過性の同様の変化はまた、人間の女性に起こるのでしょうか。
これについて調べるため、我々は米国に住む女性からデポプロベラを使用する前後の、子宮頚部組織を採取しました。
この検証は、デポプロベラがマウスで見られるものと同様の接着分子および組織透過性の変化が引き起こされていることを示しました。

【今後の方向性】
性感染症と予定外の妊娠は相互に繋がっている公衆衛生上の問題です。
一般的に、感染症の負担が大きい国では、より高い乳児および妊産婦の死亡率の問題があります。そのため、効果的な避妊の必要性が大きいのです。

デポプロベラとLNGは、女性にとって有効な避妊方法ですので、我々は、粘膜バリアを弱めるする能力に対抗する方法があるかどうかを研究するつもりでした。これを念頭に置いて、我々はまた、デポプロベラとエストロゲンの両方で治療されたマウスでの研究を行いました。

この組み合わせにより、生殖器の粘膜バリアが強化され、マウスはウイルス感染への影響を受けにくくなりました。
これはまた、女性がデポプロベラとエストロゲンおよび抗ウイルス殺菌剤を放出する膣リングを使用することになるといった筋書ができる可能性を示唆しています。
そうなる前に、デポプロベラおよびエストロゲン放出膣リングは、ウイルス感染からヒト以外の霊長類を保護するかどうかを判断するための研究が必要とされています。そこで、肯定的な結果が現われた場合は、次の論理的なステップとしては、同様のアプローチによりまた、女性のHIVへの感染リスクを減らすための臨床試験となるでしょう。

(記事元)http://medicalxpress.com/news/2016-07-hormonal-contraception-role-hiv-infection.html