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免疫性血小板減少症に必要な新しい治療選択肢

免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)は、全身性疾患がない場合に紫斑または点状出血として出血が現れる循環血小板の減少を特徴とする       臨床症候群です。

ITPは後天性自己免疫性出血性疾患であり、成人100,000人あたり約3.3人の発生率です。また、急性と慢性があります。

原発性ITPは、新たに診断された(診断後3ヶ月未満)、持続性(診断後3ヵ月〜12ヶ月)、よび慢性(診断後12ヶ月以上)に分類されます。

脾臓摘出術でも反応のない、または再発した場合は難治性のITPであると考えられます。

ITPは一般に、最終的に不十分な血小板産生として現れる巨核球成熟障害、または骨髄の代償能力を超えた場合に抗体を媒介した血小板の破壊によって引き起こされます。

自己免疫病因から生じるITPについては、異常な自己抗体、通常は1つ以上の血小板膜糖タンパク質に対する特異性を有する免疫グロブリンG(IgG)が、循環する血小板膜に結合します。

骨髄巨核球が産生を増加させることができず、正常な数の循環血小板を維持できない場合は、血小板減少症および紫斑病を発症します。

治療は、一般的には免疫調節と血小板破壊の減少を目的とし、現在の治療的介入にはグルココルチコイド、静脈内免疫グロブリン、           抗D免疫グロブリン、リツキシマブ、および他の免疫抑制剤によって行われます。

これらの治療薬は抗血小板抗体の産生を抑制し、免疫細胞の数を減らすことができます。

さらに、脾臓摘出術は、『マクロファージFcgR』によって媒介される血小板が破壊された部位を除去することができ、また、急性の場合には、通常、迅速な治療により完全に寛解します。

しかし、慢性のITPでは、結果が予測できないことが多く、合併症や死亡のリスクが高いため、脾臓摘出術は、一般的には高齢者には           適用されません。

治療の目的は、血小板レベルを正常範囲に戻そうとするのとは対照的に、患者が大出血を起こさないような血小板レベルを達成することです。

しかし、一部の患者ではこの閾値の水準にさえ達することができず、そして多くの患者で一次治療および二次治療の後に再発する可能性があります。

広範囲の治療法が利用できるにもかかわらず、多くの患者は、ITPの病因は異質性であるために治療に無反応であったり、抵抗性があったり、または治療に対して不耐性があります。

医療誌Expert Review of Hematologyに掲載された論文によると、研究者らはこの疾患に対する新しい治療法を開発する必要性を強調し、ITPのために開発された現在および新たな治療法について、議論がなされています。

「標準治療に反応しない、または許容性のない患者は、個別に診断と管理がなされるべきであり、可能であれば、新しい臨床試験に           参加するべきです。」

と著者で中国医学科学アカデミーの血栓症止血センター、および北京にある北京協和医科大学のレンチ・ヤン博士は述べました。

「トロンボポエチン受容体アゴニスト(TPO-RA)以外では、抗CD20抗体、新生児Fc受容体(FcRn)遮断薬、または脾臓チロシンキナーゼ(Syk)阻害薬は、難治性ITPの患者に効果がみられる可能性があります。」とヤン博士は付け加えました。

 

トロンボポエチン(TPOとトロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA

TPOとTPO受容体との間の主要な相互作用は、生存能力と、初期の巨核球前駆細胞と同様に巨核球コロニー形成細胞の成長と増殖を促進します。

研究は、TPO濃度がITPの患者において正常または正常に近いレベルであることを実証しており、それは血小板レベルを改善するための補足的な  外因性TPOおよびTPO-RAの投与を可能にします。

米国食品医薬品局(FDA)は、成人の慢性ITPの治療薬としてエルトロンボパグやロミプロスチムなどのトロンボポエチン受容体作動薬を承認しています。

 

TPO受容体膜貫通型のH499残基に結合する経口非ペプチド小分子TPO-RAであるエルトロンボパグは、いくつかの大規模臨床試験で有効性が   示されています。

慢性ITPの成人114人で行われた6週間の無作為化多施設共同試験では、エルトロンボパグを投与されている患者の59%がプラセボを投与されている患者の16%との比較で奏効が示されました。

 2015年に終了した9年間の延長試験においても奏効が見られ、奏効率は85.8%に達し、52%の患者が25週以上の持続的な奏効を達成することが  できました。

以前発表された結果によると、エルトロンボパグで治療された成人の総奏効率は約60%から80%でした。

ロミプロスチムは、TPO受容体に対する融合タンパク質アゴニストであり、脾臓摘出および非脾臓摘出のITPの患者に効果がみられます。

米国で承認を受けた2008年に実施された第3相試験では、非血小板摘出患者の血小板奏効率は全体で88%、脾臓摘出患者で79%であり、      これらの奏功率は有意に高いものでした。

 

FCR療法と下流のシグナル伝達経路への薬剤

 

免疫応答の重要な媒介分子である免疫グロブリンIgGのFcセグメントは、下流のシグナル伝達経路を介して細胞の食作用、および抗体の再利用に  関与しています。

 ITP用に開発された最初の治療法の1つである静脈内免疫グロブリンは、IgGとの相互作用を遮断し、血小板保護を仲介するために、FC受容体(FcR)と組み合わせることができます。

FcRやそれに関連する下流のシグナル伝達経路の作用を標的とする生物製剤が増えています。

自己免疫疾患の発症に関与するシグナル伝達経路の重要な調節分子である非受容体型チロシンキナーゼの1つ、脾臓チロシンキナーゼ(Syk)は、 免疫細胞や血小板などの造血幹細胞に発現します。

Syk阻害剤には、チロシンキナーゼ依存性Fcg受容体媒介マクロファージ食作用を抑制し、血小板の破壊を減少させるフォスタマチニブなどが    あります。

第2相試験では、フォスタマチニブを100 mgまたは150 mgの投与量で6ヶ月間1日2回投与した場合の全体的な奏効率が、プラセボ群の14%に対し43%でした。

 

共刺激分子の遮断

CD40とCD154は共刺激分子ですが、それらの効果を遮断すると自己反応性T細胞およびB細胞が阻害され、治療効果が得られる可能性があります。

抗CD154モノクローナル抗体IDEC-131(トラリズマブ)を含むいくつかの薬剤は、現在、初期の臨床試験中です。

第1相臨床試験では、10mg / kgのトラリズマブを1回注射した慢性難治性ITP患者5人中3人に血小板数の増加が示されました。

また別のヒト化抗CD154モノクローナル抗体、hu5c8(ルプリズマブ)は、慢性難治性ITP患者46人を対象とし、トラリズマブとの併用で評価されました。

 15人の患者が20mg / kgのルプリズマブで治療され、そのうち4人は完全寛解がみられ、2人には部分寛解が見られました。

31人の患者が1回の投与で5mg/kgから20mg/kgのトラリズマブで治療され、5人の患者には、1人の完全奏効を含む、治療効果が見られました。

著者らは、「ITPの治療は患者それぞれの生態に重点を置くべきであり、特定の薬物への反応、患者の許容度、そして個人的な経済的負担など、   さまざまな個人的要因を考慮に入れなければなりません。そのため、今後の研究では、さまざまな患者個人に合わせた標的療法の提供に       焦点を当てるべきです。」と、結論付けました。

【以下のウェブサイトより引用】

New Treatment Options Needed for Immune Thrombocytopenia