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高血圧研究:2019年の概要

この特別記事では、2019年に発表された高血圧に関する研究の中で、最も興味深いものの一部をまとめています。
特に、栄養や危険因子、高血圧と認知症の関係に焦点を当てました。

今日、米国では、成人の3人に1人が高血圧を患っています。

高血圧は、脳卒中や冠動脈疾患といった心血管イベントリスクを高め、治療しないままでいると、寿命を縮める可能性があります。

高血圧は懸念される域にまで蔓延しており、多大な身体的影響を及ぼす恐れがあるため、科学者らは高血圧を理解する為に膨大な努力を注いでいます。

人が高血圧が医学的状態として初めて特定したのは何千年も前ですが、科学者らは現在も、詳細について調査し続けています。

科学者らが2019年に実施した研究では、将来有望な、そして一部のケースでは予期せぬ調査結果が示されました。
例えば、2月に発表された論文では、80歳以上の女性の場合、血圧が「正常な」人は、高血圧がある人よりも死亡リスクが高いと結論付けられました。

その他、ギリシャの科学者らが、昼寝が血圧の低下に役立つ可能性があると結論付けています。
「日中に睡眠をとると、その他ライフスタイルの変更と同じ程度、血圧を低下させる効果があるようです。」と、研究者の一人であるマリノス・カリストラトス博士は説明しています。

他には、科学者らによって第83回Annual Scientific Meeting of the Japanese Circulation Societyで発表された驚くべき研究があります。
この研究では、夜間に複数回の排尿が必要になる場合、これは高血圧の兆候である可能性があると結論付けられました。


【栄養の役割】
私たちが食べる食べ物は、全体的な健康に大きな影響を与えることは言うまでもありません。
例として、アメリカ心臓協会は、果物や野菜の多い食事をとり、塩や脂質の多い製品を避けることで、血圧を抑えることが出来ると提案しています。

過去数年間で、栄養に関する関心が急激に高まっています。
科学者らは、各食品や食品化合物にますます注目しています。
不健康な食生活は良く知られる高血圧の危険因子ですが、研究者らは2019年、これを更に掘り下げました。


<特定の食品やサプリメント>
2019年に発表されたとある研究では、クルミの摂取が血圧に及ぼす影響が調査されました。
この研究では、実験的にクルミを多く含む食事をとった人は、血圧が大幅に低下したと結論付けられました。

この種の研究は、もう少し掘り下げる価値があります。
というのも、多くの場合、肯定的な結果が出ることで利益を得る可能性のある業界や組織が、資金提供を行っているためです。
例えば、上記のクルミに関する研究は、カリフォルニアクルミ委員会による部分的な資金提供を受けています。

調査結果を無視すべきであるという意味ではありませんが、一旦立ち止まって考える必要があるでしょう。

最近行われた別の研究では、スピルリナに注目しました。
スピルリナは、スピルリナプラテンシスと呼ばれる細菌の乾燥バイオマスです。
製造業者が食品に加えたり、一部の人はサプリメントとして摂取しています。

以前の研究ではスピルリナが高血圧を軽減する可能性が示されており、最も最近の研究では、この可能性の理由を探ろうとしました。

科学者らは、スピルリナの摂取によって生成されるタンパク質が、血管を弛緩させると結論付けました。
著者は、SP6として知られるこのタンパク質が、高血圧治療に役立つ日が来ることを期待しています。


<保存料、添加物、水分>
とある研究では、特定の食品に注目するのではなく、スーパーマーケットよりも地元の食料品店から食品を購入することによる影響を調べました。

著者は、地元の農産物を食べることで、食品の「鮮度」を長期間保つために使用される様々な保存料や添加物の摂取を避けることが出来ると理論付けました。

この研究は比較的小規模に行われたものの、著者は6か月後、地元の農産物を食べた人は内臓脂肪が減り、うつ病スコアが改善し、収縮期血圧が低下したことを見出しました。

とある科学者チームは、最近別の角度から調査を行いました。
彼らは、ミネラルを多く含む飲料水が血圧を低下させる可能性を調べました。

この研究では、バングラデシュの沿岸地域に住む人々に注目しました。
飲料水の塩分は様々です。
塩分濃度の高い地域の飲料水には、血圧を上昇させることが知られるナトリウムが多く含まれます。
しかしこの水には、マグネシウムやカルシウムも多く含まれ、これらはどちらも血圧を下げます。

著者は、塩分濃度が高いことで、全体的には血圧が下がったと結論付けています。
彼らは、「カルシウムとマグネシウムの血圧降下作用が、ナトリウムの有害作用を打ち消した」と書いています。


【原因と危険因子】
高血圧の危険因子の一部は、比較的確立されています。
これには、飲酒や喫煙、ストレス、肥満などが含まれます。
しかし、高血圧は非常に一般的であるため、さらに多くの要因が関係している可能性があります。

同様に、科学者は血圧に影響するライフスタイルや食事要因を理解しているものの、それらがどのように変化を引き起こすのかは完全にはわかっていません。

一部の人においてのみ血圧が上昇する原因とメカニズムを理解することは不可欠であり、これにより高血圧の治療や予防する革新的な方法の開発につながる可能性があります。

一部の科学者は、一見そうは見えないような危険因子を調査しています。
たとえば、6月のJournal of Public Healthに掲載されたとある論文では、住んでいる地域による影響を調べました。

過去の研究では大気汚染への曝露と高血圧リスクの関連が見つかっており、この最新の研究では、以前に浮上したこの疑惑について、さらに一歩進んだ調査が行われました。

予想通り、研究者らは大気汚染と高血圧の関連を見つけました。
但し、リスクの増加は、アパートなどの田世帯住宅に住んでいた人にのみ顕著に見られました。

著者は、これにはいくつかの要因がある可能性があると考えています。
例えば、他人と近い場所に住んでいると、よりストレスが溜まる、もしくは騒音が増える可能性があります。
この研究では、血圧に影響し得る要素の複雑さを垣間見ることができます。


<口腔衛生>
奇妙なことに、とある科学者グループは最近、マウスウォッシュが高血圧リスクに与える影響を調べました。

雑誌「Frontiers in Cellular and Infection Microbiology」に発表された調査結果の中で、著者らは
マウスウォッシュは口内の「善玉菌」を殺菌すると結論付けました。
これらの善玉菌は、血管の健康に重要な一酸化窒素(NO)を生成します。

NOは、血管拡張剤として機能します。
すなわち、血管の内側の筋肉を弛緩させることで、血管を広げ、血圧を下げる作用があるのです。

科学者らは特に、マウスウォッシュに含まれていた化学物質のクロルヘキシジンに注目しました。

著者によると、「1日2回クロルヘキシジンを1週間使用すると、収縮期血圧が大幅に上昇し、クロルヘキシジンの使用による影響からの回復作用により、舌の上に硝酸還元菌が増える結果となった」ことが実証されたといいます。

引き続き口腔領域に焦点を当てた2019年のレビューでは、歯周病と高血圧の関連を探しました。
このレビューでは、歯周病の一種である重度の歯周炎がある人は、高血圧リスクが49%に上昇することが示されました。

筆頭著者のFrancesco D'Aiuto教授は、調査結果を次のように要約しています。
「この研究では、直線相関が見られました。歯周炎がより深刻であるほど、高血圧がある可能性が高まったのです。」


<亜鉛の役割>
別のプロジェクトでは、血圧を健康な値に維持する上での亜鉛の役割を調査しました。
長年にわたり、研究者らは亜鉛濃度の低下と高血圧リスクの上昇の関連性に注目してきましたが、正確なメカニズムを突き止めることは困難でした。

最新の研究では、この亜鉛と血圧の相互作用における重要な要素が特定されています。
著者によると、肝臓のナトリウム・クロライド共輸送体(NCC)が柱であるといいます。
NCCは、ナトリウムを体に送り返すことにより、ナトリウムが尿中に排出されるのを防ぎます。

亜鉛はNCCと相互作用します。
亜鉛の存在により、NCCの活性が低下します。つまり、体内のナトリウム保持量が減るのです。
ナトリウム濃度の上昇(例えば塩分の過剰摂取により)は、高血圧リスクを高める要因となるため、これは重要です。

著者は、この新しい発見が治療の改善に役立つことを願い、次のように記述しています。

「亜鉛欠乏が血圧調節不全に寄与する特定のメカニズムを理解することで、慢性疾患患者の高血圧の治療に多大な影響を与える可能性があります。」


【高血圧と認知症】
科学者らは、高血圧と血管性認知症の関係を特定しています。
脳卒中が起こると、その後血管性認知症を発症することがあるため、この関連性は理にかなっています。

しかし、高血圧はmアルツハイマー病を含む他の種類の認知症リスクを高める可能性もあるようです。

今年6月に発表された研究では、一般的に用いられる抗高血圧薬であるニルバジピンが、脳への血流を改善することでアルツハイマー病の進行を遅らせることがわかりました。

具体的には、ニルバジピンを服用した人は、服用しなかった人と比較して、記憶や学習に不可欠な脳領域である海馬の血流が20%増加したことが示されました。


<生涯にわたるパターン>
その他、血圧の変動を調べ、認知症におけるこの変動の役割を調べた科学者がいます。
例えば、アルツハイマー病を患う被験者を募ったとある調査では、血圧の変動が最も大きかった人は、症状の進行速度がより速くなることがわかりました。

研究著者のユルゲン・クラセン博士は、次のように述べています。
「血圧変動が大きいと、認知機能低下の進行速度に影響する可能性があります。」

同様のテーマで、別の科学者グループは、数十年にわたって血圧のパターンを観察しました。
著者は、調査結果を次のように要約しています。

「中年から晩年にかけての持続的な高血圧パターン、および中年期の高血圧とそれに続く高齢期の高血圧が見られた患者には、正常な血圧を維持した患者と比較して、その後の認知症リスク増加との関連が見られました。」

生涯にわたる高血圧をグラフ化した別のプロジェクトでは、高血圧がある、もしくは血圧が上昇している36~53歳の人は、高齢期に白質病変を発症したり、脳容積が縮小しやすいことがわかりました。

著者は、この発見により、医師や一般市民が出来るだけ早く血圧を確認し、管理するようになれば良いと考えています。

2020年になっても、高血圧に関する医学研究は高い水準を維持し続けるでしょう。
科学によって高血圧の原因やメカニズムが徐々に解明されていくにつれ、広く蔓延する高血圧を管理し、影響を最小限に抑えることを可能にしていく必要があります。

出典 2019年12月27日更新 Medical News Today『High blood pressure research: 2019 overview』(2020年1月8日に利用)
https://www.medicalnewstoday.com/articles/327097.php#1