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長期の研究データが示す、脳深部刺激は重度のうつ病に効果的

学術誌『American Journal of Psychiatry』のオンライン版に10月4日公開された研究によると、脳梁下帯状回(SCC)と呼ばれる脳の領域の       脳深部刺激(DBS)が、他の治療に反応しなかった最も重度のうつ病である、治療抵抗性うつ病の患者に対して、長期にわたり持続する強力な     抗うつ効果があることがわかりました。

 

現在、神経学科、脳神経外科、精神医学の教授であり、マウントシナイアイカーン医学学校の『高度回路治療のためのナッシュファミリーセンター  (The Nash Family Center for Advanced Circuit Therapeutics)の創設者でもある、ヘレンS.メイバーグ博士が率いた、エモリー大学で検証された         この研究では、研究チームが実施した以前の研究を検証し、これらの患者でのDBSを改善および最適化するための追加研究の基礎を築きました。

 

脳深部刺激法は、現在、米国食品医薬品局によって、本態性振戦症、パーキンソン病、てんかん、強迫性障害を治療するために承認されていますが、これは神経刺激装置(または、「脳ペースメーカー」と呼ばれることもあります)を配置する脳神経外科手術で、脳の奥深くに埋め込まれた電極を介して高周波電気インパルスを各障害の症状の原因となる特定の脳領域に送ります。

 

メイバーグ博士は、2005年に治療抵抗性うつ病患者を対象にした、『Brodmann Area 25』として知られる脳梁下帯状白質でのDBSの最初の試験を   主導し、臨床的有益性があることを実証しました。

 

その後の小規模な非盲検試験でも同様に好ましい結果が得られましたが、これらの有望な非盲検結果があったにも関わらず、統計的に有意な抗うつ反応がないと事前に設定された6ヵ月の時点で統計的に有意な抗うつ反応が欠如していたため、多施設無作為試験は早期に中止されました。

 

「大規模な試験は早期に中止されたという事実はありましたが、私と同僚が最初の試験から患者を追跡し続けているときに確認したことは、時間の  経過とともに患者の状態が良好となり、それだけでなく、良くなった状態を維持しているということでした。そのためこの試験コースを継続しました。」とメイバーグ博士は言います。

「8年以上に渡る観察の結果、研究参加者のほとんどは、Area 25試験での深部脳刺激に対する抗うつ反応を経験しました。そしてそれは、強固で  持続的なものでした。抗うつ反応の長期維持と再発防止をサポートするDBSの能力は治療の進歩です。」

 

具体的に、この研究では、治療抵抗性うつ病に対するSCC DBSの非盲検臨床試験に登録された28人の患者の長期転帰データ(4〜8年)を記録して います。

 

追跡期間の2年目から8年目まで、反応率と寛解率はそれぞれ50%と30%以上に維持されました。

すべての参加者の4分の3が、研究への参加の半分以上について治療反応基準を満たし、全参加者の21%が最初の1年から治療に対する継続的な反応を示しました。

 28人の参加者のうち、14人が少なくとも8年の追加治療を完了し、11人が少なくとも4年の追加治療を完了し、3人が8年の追加治療の開始前に    脱落しました。

この研究を通じて提示されたデータは、治療抵抗性うつ病に対する脳下垂体帯領域の高周波深部脳刺激(SCC DBS)の長期的な安全性と持続的な有効性を裏付けています。

 

「臨床試験は一般に短期間の実薬治療とプラセボ治療を比較するように構成されていますが、我々の研究結果は、この治療が困難な臨床集団に   おけるDBSの最も重要な強さは、長期にわたる持続的な効果にあることを示唆しています。」

と、エモリー大学医学部で精神医学および、行動健康科学の助教授をつとめるアンドリュー・クロウェル博士は言います。

 「うつ病に苦しむ人々にとって、DBSが数年にわたり、抑うつ症状の有意かつ持続的な改善につながる可能性があるというのは喜ばしいニュース   です。」

 

すべての研究参加者は、「大うつ病性障害」または「双極性障害2型」のいずれかの基準を満たし、少なくとも4つの抗うつ薬による治療、心理療法、  および電気けいれん療法に反応しない期間がその時点で12ヵ月以上でした。

すべての研究参加者は、同じ外科医による治療を受け、エモリー大学医学部でSCC DBS手術を受け、同じ装置を使用しました。

最初の17人の参加者は、2007年から2009年の間に、1か月の単一盲検刺激オフ、導入期間での非盲検試験で移植されました。

 

2011年から2013年にかけて、トラクトグラフィーを用いた解剖学的ターゲティングを使用して、大うつ病性障害のある11人の参加者が移植されました。

合計178人の患者の年のデータが収集され、この長期追跡調査の分析のために統合されました。

参加者は、手術の少なくとも研究を行う精神科医での治療を4週間前に開始し、32週間、毎週通院しました。

その後、研究の2年目から8年目までは、医師への訪問は6か月ごとに減少されました。現在、23人の患者が長期の追跡調査を続けています。

 

「マウントシナイの高度回路治療センターでは、現在、国立衛生研究所の脳イニシアチブが資金提供しているこの研究の次のフェーズに向けて準備を進めています。

私たちの新しい研究では、治療抵抗性うつ病の患者を募集しますが、活発なDBSによる治療中に刺激部位から直接脳の活動を同時に記録できる  新しい研究プロトタイプDBSシステム(Summit RC + S)が埋め込まれます。

高度な画像処理、行動、生理学的評価も定期的に実行されます。これらの研究は、神経レベルで数日、数週間、数ヶ月にわたる回復の軌跡を監視  する前例のない機会となります。」

とメイバーグ博士は述べています。

 

「エモリー大学の予備調査結果に基づいて、これらの脳のサインがDBSメカニズムに対する重要な新しい洞察を提供し、重要なこととして、患者の  臨床結果をさらに最適化できるDBSの管理に関する将来的な決定に役立つものとなることを期待しています。」

 

【以下のウェブサイトより引用】

Long-term study data shows DBS is effective treatment for most severe form of depression

Medical Xpress