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薬の力で100歳まで健康を保てるか?

最近ヒトを対象とした小規模研究で、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)の効果が検証されました。
NMNは2013年に行われたハーバード大学の研究で、老齢マウスのミトコンドリア(細胞内の発電所)を活性化した化学物質です。
2018年の研究では、マウスの血管成長を改善し、運動耐性を向上させました。
NMNは、ミトコンドリアの働きを改善する考えられている化合物であるNAD値を向上します。
ハーバード大学医学部の遺伝学教授であり、老化の生物学的メカニズムを研究するポールF.グレンセンターのコーディネーターである筆頭研究者のデイビッド・シンクレア氏は、昨年からヒトを対象としたNMNの研究を開始しました。
「このアプローチは、マウスの血管成長を刺激し、スタミナと持久力を高め、人間の血管老化から生じる疾患治療の準備を整えます。」と、シンクレア氏は話します。

有望な老化研究は他にも存在します。
エージング研究所のバルジライ氏は、例として、3000人の非糖尿病成人を対象に抗糖尿病ジェネリック薬であるメトホルミンを調査した6年間の研究が今年始まるようであると述べています。
「2型糖尿病のためにメトホルミンを服用する人は、糖尿病のない人よりも心血管疾患やがん、認知機能低下が少なく、長生きすることが既に確認されています。」と彼は指摘します。
「そこで、この薬を糖尿病を患っていない人間を対象に調査したいと考えています。」

メトホルミンは、心疾患などの問題の発症を2〜3年遅らせる可能性があります。
「メトホルミンは効果のマイルドなアンチエイジング薬ですが、これにより個人の加齢関連疾患ではなく、加齢そのものを研究することが可能になります。」とバルジライ氏は言います。
「このことをFDAに相談し続けていますが、加齢そのものを疾患と呼びたがる人はいません。私たちは、人々の健康を向上したいだけなのです。」

<寿命の宝くじに当選する>
現状、80代、90代、それ以上になっても健康でい続けることは、パワーボール(アメリカの宝くじ)でジャックポットを当てるようなものです。
65歳以上のアメリカ人55,000人を対象とした調査では、自身を健康状態を非常に良いもしくは素晴らしいと評価したのはたったの48%でした。
ドラッグストアやインターネットの他、1500年代の若返りの泉や1920年代のヤギの睾丸移植など、
人間の歴史が証拠のない若返り薬で溢れているのも訳ありません。
今日の効果に疑問のある若返り薬としては、幹細胞から成長ホルモン、10代の血漿の輸血、サプリメントなど多々あります。
2017年、アメリカ人はこうした製品や治療に1,940億ドルも費やしました。
このことが、真剣な老化科学研究者は自分の仕事について語る際“アンチエイジング”の世界を避ける理由です。
「“アンチエイジング”は私の敵です。」とバルジライ氏は付け加えました。
「一部のいかさまが、私たちの評判を傷つけています。」

一方、研究者によってこうしたより正当な薬が少しずつ研究されていく中、健康寿命を延ばしたいと考える場合、私たちには何ができるでしょう?
答えはずっとそこにありました。
それは「喫煙せず、健康的な食生活を心がけ、運動を行い、ストレスと睡眠を管理すること」であると、New England Centenarian Studyの設立ディレクターのトーマス・ペールス氏は言います。
これらを実施することで、90代まで健康を保つことができます。
これ以上は、アンチエイジング薬の開発を待つか、幸運な遺伝子を受け継ぐしかありません。
「100歳以上の人は、加齢関連疾患の発症を遅らせる種類の遺伝子を持っているようです。」

寿命を延ばすだけでなく、年齢による衰えを改善する薬は、身体的健康が低下しがちな高齢期にレッドゾーンに突入するのを防ぐことができるかもしれません。
「私たちは、老化を標的とした未来の薬には、健康的なライフスタイル以上の効果があると考えています。」と、シカゴ大学のオルシャンスキー氏は言います。
私たちがどれだけ長く生きられるかはまだ分かりません。
「人間の最大寿命は約115歳ですが、平均寿命は約80もしくは85歳です。そのため、私たちにはあと約30年間考える時間があります。」と、バルジライ氏は言います。

85歳の時に65歳のように感じることができるだけでも、衝撃的なできごとでしょう。
「孫やひ孫を見ることが叶うくらいに長生きし、健康でいられるとしたら、是非ともそうしたいです。」と、マニック氏は言いました。

ニューヨークのガリソンで生命倫理学の研究を行うハスティングセンターのダニエル・カラン氏は、バランスが大切であると話します。
「長生きを目的に長寿を達成したいと考えたことはありません。」と彼はいます。
「若者と高齢者のバランスが大いに崩れることとなるでしょう。寿命を延長に反対する主な目的として、支持者が「私たちの人生はどのようなものになるのか」という問いに答えていないことです。一方で、私は現在88歳です。老化の改善とは、がんや心臓病、脳卒中を予防することを意味します。健康であることが一番重要なのです。」

テキサス州オースティン在住、現在87歳のドリス・オバートン氏もこれに同意しています。
3人の子供と5人の孫を持つ元看護師として、彼女は数年前に“resTORbio’s RTB101 respiratory-infection study”に参加しました。
「毎冬気管支炎を発症し、回復にかかる時間が年とともに長くなってきました。」と彼女は言います。
「このような薬が症状を改善できるとしたら、素晴らしいことです。」

出典: 2019年6月25日 Communal News『Can We Put the Brakes on Aging? Don’t Confuse It With Mortality』(2019年10月15日に利用)
https://communalnews.com/2019/06/25/can-we-put-the-brakes-on-aging-dont-confuse-it-with-mortality/