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若い心筋梗塞の患者の10%に見られる家族性高コレステロール血症

新しい研究の結果によると、急性心筋梗塞(MI)で入院した10人の若い成人のうちの1人は、おそらく家族性高コレステロール血症(FH)
であると考えられます。

MIから生還した人の大多数はスタチンで退院したものの、FH患者の約3分の1、およびFHのない患者の半数以上が、
高強度のスタチンを服用することなく退院しました。
1年後の追跡調査では、FHがある患者の80%以上、FHのない患者の65%近くが、現在のガイドラインでは依然として、
LDLコレステロール値が高すぎると考えられています。

「私たちが実際のLDLの減少を見ると、FHがあるかどうかにかかわらず、LDLコレステロールの全体的な減少はかなり緩やかなものでした。」
とマサチューセッツ州ボストンのある、ブリガムアンドウィメンズホスピタル上席研究員である、ロン・ブランクスタイン博士は述べました。

「これらの人々はすでに若くして心臓発作を起こしており、臨床医はLDLをできるだけ低く抑えることに、
非常に積極的であると思うかもしれませんが、現実には、心臓発作の1年後の調査では彼らのLDLコレステロール値は、
1年間で70 [mg / dL]を超えていました。」
ブリガムアンドウィメンズホスピタルのアビナンダー・シン博士の主導で行われ、2019年5月13日にアメリカ心臓病学会誌に掲載された
この研究は、YOUNG-MI登録簿に記載されている1,996人の調査に基づいています。

ブランクスタイン博士によれば、この登録簿には、彼の施設とマサチューセッツ総合病院に入院した50歳以下の患者が含まれており、
若いMI患者の臨床的特徴を評価するために作られています。

米国では全体的な心筋梗塞の発生率が低下していますが、若年層での発生率が上昇しています。
これをブランクスタイン博士は「驚くべき統計」と呼んでいます。

「興味深いのは、若者たちが病院に来ると自分が心臓発作を起こしたということを本人が非常に驚くということです。」
と博士は述べました。

「彼らは、“どうして私が?私は全く健康なのに。まだ40代ですよ。”と尋ねます。しかし、そういう人の多くは、
彼らが思っているほど健康ではないかもしれません。彼らは、喫煙し、また肥満であったり、人によっては、糖尿病や高コレステロールがあります。
確認してみると、大多数のケースで根本的なリスク要因があることがわかりました。」

遺伝子ではなく脂質基準に基づく分析  

MIで入院した1,996人の成人のうち、180人の患者(9%)がオランダの脂質クリニックの基準で定義されるように、
FHの可能性があるか確定していました。
特に、FHは最も一般的な心臓の遺伝的異常であり、初期の心血管疾患と強く関連しているため、
ブランクスタイン博士はこれらの若い患者でFHの有病率がより高いと予測するかもしれないと述べました。
しかし彼はそれについては比較的低いと考えています。

「大多数の事象は必ずしも家族性高コレステロール血症のこれらの患者に起こるわけではなく、
他の多くの潜在的な危険因子を持つ人に起こっていることを認識することが重要です。」
と彼は言いました。

本分析におけるFHの有無にかかわらず、糖尿病は約20%の人々で観察されました。 50%以上が喫煙者で、そのうち3分の1が肥満でした。

FH患者では、MIの入院時のベースラインでのLDLコレステロールは179.8 mg / dLでしたが、その当時スタチンを服用していたのは
57.2%のみでした。

ブランクスタイン博士は、潜在的にすべてのFH患者がスタチンを服用しているべきだと述べましたが、使用率が比較的低いのは、
FHがMIの前に診断されていなかったためである可能性があると述べました。

退院時には、FH患者の63.3%、および非FH患者の48.4%が高用量でのスタチンが投与された状態でした。
退院後、 1年の時点で、平均LDLコレステロール値はFHのある患者とない患者でそれぞれ96.0および80.0 mg / dLでしたが、より多くのFH患者が、
LDL値のコントロールは不適切であることが示されました。

例えば、FH患者のうち、82.2%がLDL値は70 mg / dL以上であり、43.0%が100 mg / dL以上でした。
「LDLコレステロールを低くすればするほど、有害事象を減らすことができることを示す多数のデータに基づき、
LDLコレステロールを下げるときには、もっと積極的に取り組む必要があることがわかります。」
と、ブランクスタイン博士は述べました。
「これは2018年コレステロールガイドラインにも沿っています。発作を起こした人など、リスクが高い人にとっては、
LDLコレステロールをさらに下げる必要があります。」  

臨床診療では、医師はしばしば単一の薬剤から始めて、必要ならばエゼチミブまたはPCSK9阻害剤のような第二の薬剤を加えて、
最初のLDL反応を評価します。

この調査時点では、PCSK9阻害薬はまだ承認されていませんでしたので、エゼチミブが投与されて退院したFH患者はわずか5.0%でした。

 「病院で何かを始めるのは簡単なことが多く、追跡調査では、治療を強化するという意図があります。
しかしそれはいつもそうであるわけではありません。」
と、ブランクスタイン博士は述べました。  

過小診断と過小評価

「FHはほとんどの国では、診断不足あり、また過小評価されたままであり、FH患者において予防可能であったはずの、
長期の疾患罹患率および死亡率をもたらす可能性が高いです。」
とオランダのアムステルダムにあるアカデミックメディカルセンタのG.キースホービング博士、および、ローレンス・リースカンプ博士、
また、イギリス ロンドンのインペリアルカレッジロンドンのカウジック・レイ博士は、この研究の付随論説で述べています。

FHの目標となるのは「早期発見と早期治療」です。

この研究に関与しないアメリカカリフォルニア州スタンフォード大学のジョシュア・ノウルズ博士は、米国の経験は世界中の国々と同様です。
医師や医療システムは有害な心血管疾患の発症前にFH患者を見つける機会がありません。
例えば、2017年に発表されたスペインの研究では、研究者らは、急性冠症候群(ACS)とLDLコレステロール値の上昇を呈した
65歳以下の成人において、ほぼ同一にFHの有病率(8.7%)があったことを確認しました。
「これらの患者が同定され、そして大部分が一般的なスタチンを用いて治療が開始された場合、
これらの心筋梗塞の大多数は予防することができます。」
と、ノウルズ博士は言います。

「これは予防できる大きな機会を逃したということです。」  
「これらの患者が特定され、主に一般薬のスタチンを用いて治療が開始された場合、彼らの心筋梗塞の大部分を予防することができました。」
と彼は言いました。
以前MIを起こしたことのあるFH患者は、再発に対して「非常に高いリスク」にあり、
新しいアメリカ心臓協会とAmerican College of Cardiologyのコレステロールについてのガイドラインでは、
このリスクのあるグループをPCSK9阻害剤のような非スタチン薬による治療の候補として特定していると述べました。  

アメリカ・ニューヨーク大学医学部のハワード・ワイントローブ博士にとって、この研究の意味はFHを超えています。
彼は、心筋梗塞後のLDLコレステロールを積極的に減少させることの利点を示す豊富なデータがあることを指摘し、
目標を70 mg / dL未満にするという、これらの新しいデータはアテローム硬化性心血管疾患リスクの高い患者の
ごくわずかな割合しか目標を達成しないことを示す以前の研究と一致すると述べました。

より最近の証拠では、現在利用可能となっているPCSK9阻害剤は、最近MIを発症した患者において、LDLを容易に改善し、
将来の心血管リスクを著しく低下させる可能性があります。

FH患者とFH以外の患者との間の長期追跡調査における全死因死亡率に差はなかったと論説者は指摘し、
このためエゼチミブのようなPCSK9阻害剤を、追加の脂質低下薬を正当化するまでには至らないと付け加えました。

しかしながら、研究者が言うように、この比較的若い患者集団における致命的な発作に対する対策が不足していたため、
確固たる結論を引き出すということに、警鐘が鳴らされています。  

【以下のウェブサイトより引用】
https://www.tctmd.com/news/familial-hypercholesterolemia-seen-10-young-mi-patient