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JapanRx / 拒絶反応抑制薬であるラパマイシンは、肝臓がんの治療薬として期待できる

拒絶反応抑制薬であるラパマイシンは、肝臓がんの治療薬として期待できる

ピッツバーグ大学医学部の科学者は、肝臓の中心静脈を囲む細胞を研究する中で、思いがけない発見をしました。
β-カテニンと呼ばれる遺伝子に突然変異のある細胞が、がんの発症を促す不良であると考えられる、mTORタンパク質を多く生成したのです。

拒絶反応抑制薬であるラパマイシンを含むmTOR阻害薬は既に市場に出回っているため、これらの薬が肝臓がんに再利用できるかを調べるために、この事象をより深く掘り下げたいと考えました。
そこで彼らは、β-カテニンとmet遺伝子に遺伝子変異を持つ肝臓がんを患うマウスモデルを用意し、ヒトの肝臓がんの20%以上に類似した腫瘍を持つマウスを作りました。

マウスにラパマイシンを投与すると、腫瘍は縮小しました。
MET阻害薬を投与すると、がんはほぼ完全に消滅したと、ピッツバーグ大学の研究者らは細胞代謝ジャーナルの発表の中で述べています。

肝臓がんに対するmTOR阻害薬の試験は既に行われたことがありましたが、殆ど成功していません。
例えば、2016年に525人の肝臓がん患者を対象に行われた試験では、肝臓移植を受けた後にmTOR阻害薬であるシロリムスをを投与された被験者と、異なる種類の拒絶反応抑制薬を投与された被験者の生存率に殆ど差は見られませんでした。
ピッツバーグ大学の研究者らは、彼らの調査結果は、mROTタンパク質に加えてβ-カテニン遺伝子変異も有する肝臓腫瘍のある患者に対するmTOR阻害薬の作用を標的とした、より綿密なアプローチが必要であると考えています。

作成した肝臓がんのマウスモデルを研究したところ、科学者らは、β-カテニンはグルタミンシンテターゼと呼ばれる酵素を使用し、mTORを活性化することを発見しました。
「mTORの活性化により、これらの細胞のタンパク質生産を促し、これにより細胞が増殖、成長するための資源が提供されました。」と、この研究の上席著者であり、ピッツバーグ大学にあるピッツバーグ肝臓研究センターのサトダルシャン・モンダ氏は述べています。

ラパマイシンの類似物質は、腎細胞がんやHER2陰性乳がんなどのあらゆるがん治療薬として市場で既に承認されています。
アストラゼネカ社が様々ながんにおいて有望なデータを示していたにもかかわらず、中期段階にある候補薬であるビスツセルチブ(vistusertib)の取り止めの決定は、腫瘍治療分野におけるmTOR阻害薬の市場は込み合っていることが原因である可能性があります。

少なくとも、ピッツバーグ大学のモンガ氏は、彼の研究の調査結果は、臓器移植を受けた肝臓がん患者には、拒絶反応抑制剤としてラパマイシンが選択されるべきであることの裏付けとなると主張しています。

「現状の肝臓がん治療では、生存期間が3~4カ月程度しか延長される見込みがありません。よって、既存の薬を別の用途で利用して治療成功率を改善するのに適した患者を識別するため、プレシジョン・メディシン・アプローチ(人の遺伝子変異などを詳しく解析して、その結果に応じた適切な薬を処方する方法)を採用しています。」

ピッツバーグ大学の研究者らは次のステップとして、肝臓がん治療及び肝臓移植を受けた患者の再発防止を目的をしたラパマイシン使用の臨床試験の実施を計画しています。

出典: 2019年2月1日更新 Fierce Biotech 『Anti-rejection drug rapamycin shows promise in liver cancer』(2019年6月21日に利用)
https://www.fiercebiotech.com/research/anti-rejection-drug-rapamycin-shows-promise-liver-cancer