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不健康な精子が流産の一因である可能性

ゼフ・ウィリアムズは、心を打ちのめされるような流産が起きた原因として、たくさんの夫婦が仕事のストレスやスキー旅行、重いものの運搬など、自分自身の行いを責めることがあると耳にしてきました。

これが理由で、コロンビア大学医学部の生殖内分泌学および不妊の責任者を務めるウィリアム氏は、流産を引き起こす可能性のある本当の医学的原因を知ることが重要であると考えています。
「そうすれば、自分を責めずに済むことが多くなる」と彼は話します。
「分子レベルの視点を持てば、流産は恥じるべきものではなくなります。」

流産は皆が考えるよりもはるかに一般的であり、妊娠の約15%に起こります。
これは多くの場合、独立した、胎芽の染色体異常によって起こります。
しかし、夫婦の1~2%が経験する習慣性流産においては、胎芽の大部分が染色体上正常であると、ウィリアム氏は言います。
「すなわち、別の所に問題があるのです。妊娠を成功させるためには、対処が必要となる全ての物事を体系的に見ていかなければなりません。」

医師は、通常3回以上の流産経験があると定義される習慣性流産を患う女性に対し、検査を受け、原因を特定するよう推奨しています。
しかし男性パートナーは、妊娠を成功させるには精子が必要不可欠であるにも関わらず、女性と同じように検査を受けないことがほとんどです。

新しい研究によると、流産を経験したパートナーを持つ男性の精子には、妊娠の失敗と関連するDNA損傷の増加が見られたといいます。
加えて、習慣性流産を経験したパートナーを持つ男性にはホルモンレベルの変化が見られ、正しく泳ぐこともできていませんでした。

journal Clinical Chemistryで発表されたこの調査結果は、流産が起きた後は男女両方が検査を受けることの重要性を示していると、アナスタシア・ディマコポウロウ氏は言います。
彼女はこの研究の著者であり、インペリアル・カレッジ・ロンドンの臨床研究員です。
「女性が流産について語る際、たくさんの恥を伴います。」と彼女は言います。
「流産は男性パートナーの問題である可能性があることも広く周知されれば、私たちの捉え方も変わるかもしれません。」

ウィリアム氏が「miscarry:流産/失敗」という言葉を避ける理由には、流産の明らかな医学的要因として精子の問題が含まれることがあります。
「この言葉には、女性が失敗し、正しく出産できなかったような意味合いがあります。(流産は)女性が適切に出産できなかったことが原因ではないのです。」と彼は話します。

この研究では習慣性流産を経験するパートナーを持つ男性50人のホルモンレベルおよび精子を比較した所、彼らのテストステロン値およびエストラジオール値(どちらも精子産生の際重要な役割を果たす)が低いことがわかりました。
動きは正常に見えるものの精子数が少ない男性パートナーは、細胞を損傷する化学物質である活性酸素濃度の異常な上昇が見られる傾向が、4倍高くなりました。
その上、精子のDNA断片化レベルが2倍高くなりました。

研究対象となったホルモンは精子の発達において重要な役割を果たす一方、こうしたホルモンの他、特に被験者に見られたDNA変異や活性酸素濃度が精子の異常に影響するメカニズムについては明らかになっていないと、ディマコポウロウ氏は言います。
「このことを明らかにするにはもう少し調査が必要です。」と彼女は話します。
「影響するのは、ホルモンレベルだけではないかもしれません。炎症や感染など、その他の問題についても調査する必要がある可能性があります。」

この研究で検出された精子の問題と習慣性流産の関係性は、未だ明確に確立されていません。
しかし、この調査結果はDNA断片化および活性酸素に関する過去の研究結果と一致していると、ウィリアム氏は述べています。
「未だに活発な研究が行われている分野ですが、結果は非常にもっともらしく見えます。」と彼は話します。

DNA断片化のある精子にも妊娠プロセスに必要な適切な数の染色体は含まれているため、卵子と受精し、妊娠を開始することはできる可能性があると、ウィリアム氏は言います。
しかし、父方のDNAは、プロセスの後半まで活動することはありません。
「男性ゲノムが活性化されて初めて、問題が出始めるのです。」と、彼は言います。
「女性が妊娠することはできますが、その後まもなく流産が起こることになります。」

私たちの精子と妊娠に関する理解は変化しました。
これまでは、妊娠が起これば精子は健康であるという認識でした。
「女性が妊娠した場合、男性側の問題ではないというような想定がされていました。しかし、これは間違っているかもしれません。」と、ウィリアム氏は話します。

さらに、原因を知ることなく習慣性流産を経験した夫婦は、精子提供の前に、卵子提供に頼る傾向にあります。
「精子提供を得る方がはるかに簡単であるため、この方法はあまり合理的ではありません。」と、ウィリアム氏は言います。
「この研究によって、卵子が問題であると推測することはできないという事実が強調されました。」

本研究、および研究の基となった数多くの文献は、習慣性流産があった後は男女共に検査を受ける必要性があることを示唆していると、ディマコポウロウ氏は言います。
彼女は加えて、男性が受ける検査の種類を変更する必要があると言います。
従来、男性の受胎能試験では精子数や動き、形態のみを調べていましたが、これでは十分とは言えません。
「男女両方が検査を受けるだけでなく、DNA断片化および(男性の)活性酸素に関する検査を加えることで、より全体像が確認できるようになります。」と彼女は話します。

リプロダクティブ・ヘルスと妊娠に関する話題に関してディマコポウロウ氏は、女性のみを標的にすべきではないと強調しています。
「男性にも焦点を当て、彼らが自身の生殖器の健康状態に関する医療ガイダンスを受けることができるようになることが大切なのです。」と、彼女は話します。

研究で男性側および女性側における流産の原因が明らかになれば、この問題に関する謎やタブーの排除につながります。
「流産はその他の健康障害とは異なると捉える人が多いですが、実際何も変わりません。」と、ウィリアム氏は言います。
私たちが現在考える流産の原因は、もう古いのです。
こうした誤解は、真実が明らかになり私たちの理解が深まれば、訂正されることでしょう。

出典:2019年1月10日更新 Popular Science『Unhealthy sperm can play a role in lost pregnancies』(2019年12月16日に利用)
https://www.popsci.com/damaged-sperm-recurrent-pregnancy-loss/