ロタウイルスワクチンは1型糖尿病を予防するのか？

科学者たちは、ロタウイルスによる感染と1型糖尿病を発症するリスクの増加との関連性を強調しており、病原体に対する予防接種を受けることは、この状態を予防する効果的な方法であるのかもしれません。

 

1型糖尿病は自己免疫疾患です。

 

ひとがこの疾患を発症する正確な理由は不明ですが、専門家は多くの遺伝的要因と環境的要因の複雑な関係が作用していると考えています。

長年の理論により、幼児期の特定の感染症が、特に遺伝的感受性のある小児における1型糖尿病の引き金となることが示唆されています。

 

そのような感染の1つはロタウイルスです。

乳児では、ロタウイルスが胃腸炎の最も一般的な原因となっています。

ロタウイルスの感染は、おなかの風邪としても知られる胃腸炎を引き起こします。

PLOS Pathogens誌で執筆を行った、オーストラリア・メルボルン大学にあるウォルターアンドエリザホール医学研究所の教授である、レナード・C・ハリソン博士と彼の同僚は、ロタウイルスと1型糖尿病の関連性についての理論を支えるデータを示しています。

彼らは、ロタウイルスワクチンを接種した子供たちの新しい1型糖尿病患者の減少を示す2つの研究を特に指摘しています。

 

上昇率と「入居」の関係

専門家は、1型糖尿病を患う人の数が増えていると警告しています。

2009年には、ヨーロッパの科学者グループが、15歳未満での1万人の糖尿病が新たに診断されたほぼ3万件の症例を調査した多施設共同研究の結果を発表しました。

これらのデータに基づいて、彼らは「2005年から2020年の間にヨーロッパの5歳未満の小児における1型糖尿病の新たな症例の倍増」を予測しました。

オーストラリアでは、ハリソン博士は、環境要因がこの増加に極めて重要な役割を果たす可能性が高いと書いています。

「環境要因の候補としてのロタウイルスに関連する可能性のあるオーストラリアの文献での興味深い観察結果は、母親の新生児と一緒に入居するという慣習に関係しています。」

「これは夜間に赤ちゃんを共同保育園に引き渡すのではなく、母親と赤ちゃんが一緒にいることが必要とし1970年代に導入されました。」

ロタウイルスによる感染は、新生児を預かる保育園では一般的でした。

しかし赤ちゃんが母親と一緒にいるとウイルスへ晒されるのが遅くなります。

ハリソン博士は、ロタウイルスに曝されるタイミングが重要である可能性があることを示唆するマウスの研究を引用しています。

遺伝的に影響を受けやすい新生児マウスがウイルスに感染した場合、1型糖尿病は発症しませんでしたがそれよりも後になってロタウイルスに曝されたマウスは発症しました。

 

数の減少につながるワクチン

乳児期早期のロタウイルス感染が遺伝的影響を受けやすい人の1型糖尿病を引き起こす場合、医師が推奨される予防接種スケジュールの一部としてロタウイルスワクチンを導入した場合はどうでしょうか。

「ロタウイルスの自然感染が1型糖尿病の原因因子である場合、ロタウイルスワクチンの接種は疾患の発生率を変えると仮定しました。」

と、ハリソン博士は説明します。

2007年にオーストラリア国立予防接種プログラムにワクチンが導入される8年前とその後の8年間を見て、研究チームは新しい1型糖尿病患者の数が減少していることを確認しました。

以前発表されたJAMA Pediatricsの論文によると、データは0歳〜4歳の子供の新しい1型糖尿病の診断が15％減少したことを示しています。

ただし、5歳〜14歳の子供の間でその診断率に差はありませんでした。

Scientific Reports誌に掲載された別の研究論文は同様の結果を報告しており、この研究の著者は2001年から2017年の間に米国の150万人近くの子供のデータを分析し、研究著者はロタウイルスワクチンのすべての用量を受け取った子供たちで、この時期には1型糖尿病の新規症例が41％の減少したことを報告しました。

これは、予防接種の一部のみを受けた人や予防接種を受けたことがない人には当てはまりませんでした。

しかし、ハリソン博士は、すべての研究が同じ結論に達したわけではないことを指摘しています。

たとえば、フィンランドに住む495人の子供を対象とした人口調査では、科学者がワクチン接種済みの子供とワクチン未接種の子供を比較したときに、1型糖尿病のリスクに大きな変化は見られませんでした。

 

「特定の遺伝的背景における1型糖尿病の発生率の増加を促進する環境要因は、いたるところに存在し、複数である可能性が高い。」と、ハリソン博士は結論付けています。

「ロタウイルスはそのような要因の1つかもしれませんが、ロタウイルスワクチン接種と1型糖尿病発生率の減少との関連を追加できる証拠のいくつかのラインによって裏付けられています。」

「これは、1型糖尿病の一次予防策としての初めての明確な例であるかもしれません。」

とハリソン博士は述べています。

 

【以下のリンクより引用】

Does the rotavirus vaccine prevent type 1 diabetes?

Medical News Today