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ストレスや悲しみは、文字通り人の心を打ち砕く可能性がある

ワンダ・クンプ氏は、母親のがんが進行し、ホスピスに移らなければならなくなった時、ひどく苦しみました。
「その後母親は、1週間で亡くなってしまいました。」と、ミネソタ州マンケイトに住む、現在51歳のクンプ氏は話します。
「母親は6月28日に亡くなりました。私は末っ子です。彼女の死を見届けるのは辛かったです。」

クンプ氏の義理の妹が翌日無くなり、ストレスに対処しきれなくなったと、クンプ氏は話します。
その後、母親の葬儀を執り行いました。
彼女はその場を去るとき、めまいや吐き気を感じ始めました。
そして、コンクリートの歩道上で激しく倒れました。

友人が病院に連れて行くと、彼女は骨盤を骨折していることがわかりました。
心臓が股関節手術に耐えられることを確認する為に検査を行うと、予想外の結果がみられました。

「心電図の異常に気付きました。」と、メイヨークリニックヘルスシステムサウスウェスト地域での治療を支援した心臓病の認定看護師であるスーザン・ハウは言います。
心臓が血液を送り出す際、心臓壁に異常な動きがあったと、彼女は話します。

病院では、この異常が動脈閉塞によるものではないことを確認するために、さらなる検査が実施されました。
診断結果はたこつぼ心筋症という、驚くべきものでした。

この症状は、むしろブロークンハート症候群として良く知られています。
近年研究者によって、過剰なストレスが文字通り心を打ち砕くという、長らく疑われてきた可能性が本当であることがわかってきています。

稀ではありますが、人やペットが死んだ時や、ストレスの多い治療中、失業後、その他圧倒的なストレスによって引き起こされることがあります。
症状は、心臓発作に似ています。

主に女性が、この症候群を発症します。
ブロークンハート症候群に関する医学文献はまばらですが、症例数が増えてきており、これがどのようにして起こるのか、またどのような長期的なリスクがあるのかが明らかになってきています。

最近カナダの研究者が、転移性乳がん治療中の63歳の女性がブロークンハート症候群を発症した症例を報告しました。

ヒューストンにあるMDアンダーソンがんセンターの研究者は、6年間にわたって、がん治療を受けた30人の患者がブロークンハート症候群の基準に適合していることを見出しました。
研究者らは、胸痛を起こしたがん患者の診断を検討すべきであったと述べています。

別の報告では、とある医師が、慢性肺疾患の治療を受けた女性、胃炎の治療を受けた女性、計2人の高齢女性がブロークンハート症候群を発症した症例を提示しています。

患者の心臓が「壊れる」と、主なポンプ室である左心室が弱まり、痛みや息切れを引き起こします。
この状態は可逆的で一時的なものですが、心臓発作後と同様の合併症を引き起こす可能性があります。
専門家らは、心臓に悪いストレスの多い状況にいる期間に生成されるホルモン(アドレナリンなど)の洪水によって引き起こされると考えています。

63歳のジョアニ・シンプソン氏は、3年前に愛犬のヨークシャテリアであるメハが死んだ時に、ブロークンハート症候群を発症しました。

メハの死は、シンプソン氏が当時抱えていたあらゆる問題の一つに過ぎませんでした。
彼女は当時を振り返り、その時夫は退職間近であったと言います。
不動産売却の一部は、順調に進んではいませんでした。
彼女の息子は、腰痛の悪化に悩まされていました。
彼女の義理の息子は、仕事を失っていました。

その後、1歳の時に夫婦が引き取った小さなメラが、うっ血性心不全の診断を受けました。

メラが弱っていくのを見るのは辛い経験でした。
シンプソン氏は、自分はメラの死に対応できていると思っていましたが、メラが死んだ数日後、彼女は胸と肩の痛みで目を覚まし、最悪の事態として心臓発作を疑いました。
病院では、ヒューストンメモリアルヘルマン心臓&血管研究所の循環器専門医で、彼女のかかりつけ医であるアビジートドブル医師も、同じことを考えました。

数種類の検査を実施すると、彼女の痛みには別の原因があることが分かりました。
原因は、ブロークンハート症候群でした。

ドブル氏によると、米国では2012年に6,200件以上のブロークンハート症候群症例が報告されており、約300件であった2006年から増加しているといいます。

一度に多くの事を経験することで「何かがつまずく」ことで発症することが多いと、ドブル氏は言います。
「ほぼ必ずと言っていい程、明らかなストレス要因があります。患者に詳しく尋ねると、話してくれるでしょう。」

ドブル氏は2016年5月、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンで、シンプソン氏の症例に関する研究を発表しました。

この症状は、人やペットの死亡によってのみ起こる訳ではないと、ジェフェリー・デッカー医師は言います。
彼は、ミシガン州グランドラピッズにある、フレデリック・メイジャー心臓&血管健康研究所、臨床心臓学長を務めています。
また、症状は必ずしも健康問題に集中している訳ではありません。

「私は、ケーブル会社に不満を持つ女性がブロークンハート症候群を発症したケースを扱ったことがあります。」と、彼は話します。
その他の症例としては、娘が失業したことを知った女性が発症したケースがあると、デッカー氏は言います。
彼は、ミシガン州立大学医学部の助教授も務めています。

この症候群は、激しい痛みによって引き起こされることもあります。
また、喘息補佐や激しい議論、サプライズパーティ、さらには人前で話すことが、引き金となることもあります。

たこつぼ心筋症の「たこつぼ」は、日本語の「たこつぼ」から来ています。
デッカー氏は、この症候群を発症すると、心筋の特定部分が上手く動かなくなることから、この名前がつけられたと言います。
他の部分がこの動きの不足を補うことで、心臓が日本の漁師がたこを捕まえるために使うつぼのように見えます。

患者の95%は、1~2カ月以内に回復します。
「通常、予後は非常に良好です。」と、デッカー氏は言います。
患者は一般的に、うっ血性心不全に使用されるものと同じ薬を服用し、心臓をサポート、強化します。
合併症の無い人では死亡は稀であり、死亡率は3%未満です。


<どんなリスクがある?>
約10人に1人が発症する合併症を患う人にとっては、あまり良い知らせではありません。
一例として心原性ショックがあります。
これは心臓が突然体に必要な血液を十分に送り出せなくなる症状であり、言い換えると突然起こる重度の心不全です。

研究者チームは、心原性ショックを発症した約198人のブロークンハート症候群患者の記録を調べ、心原性ショックを発症しなかった1,880人のブロークンハート症候群患者と比較しました。
チューリッヒ大学病院の研究者であるダビデ・ディ・ヴェーチェ博士は、合併症のない患者の入院中の死亡率はわずか2.3%であった一方、合併症のある患者では23.5%であったことを発見しました。
また、合併症のある患者は、合併症の無い患者に比べて、発症から5年以内の死亡率も高くなったと彼は述べています。

こうした患者に対する特定の治療ガイドラインはないと、ディ・ヴェーチェ氏は言います。
それぞれ個別に評価し、長期に渡って綿密な監視を行う必要があります。


<予防が重要である>
対処が困難な段階に到達する前に、ストレスを避ける、もしくはストレスに対処することが最善策です。

しかし、ストレスへの対処や、ストレスを回避することは複雑かつ困難である場合があります。
ジョアニ・シンプソン氏も、これは困難であったことを認めています。

「単に、物事を真剣に受け止めなければ良いのです。」と彼女は言います。
彼女と夫どちらも退職しテキサス・ヒル・カントリーに住む今、彼女の目標は、人生を楽しみ、笑い、旅をし、友人や愛する人の傍にいることです。
「正直に言って、私は今人生を大いに楽しんでいます。」

小さな犬が、彼女の心を砕いてしまったのでしょうか?
そうではないと、彼女は言います。
「私たちにはまだ、猫のバスターがいます。」
彼女は夫と犬をもう一匹買うことを検討しましたが、旅行することが多く、今後も旅行の計画があります。
「次の目的地がどこになるかは、まだわかりません。」と彼女は話します。
「次に何が待ち構えているかはわかりませんが、楽しみです。」

クンプ氏も、順調です。
彼女は異常な心臓壁運動を改善させるために薬を処方され、今では心臓の状態は正常になったと、ハウ氏は述べています。

クンプ氏は、母親のいない初めてのサンクスギビングは少し辛かったものの、体調ははるかに良くなったと言います。

それでも、休暇は今までと同じではないと、クンプ氏は言います。
「母親が、私たちの繋がりを保つ架け橋役でした。サンクスギビングやクリスマスは、母親の家で過ごしていました。」と、合計12人いる兄弟の末っ子であるクンプ氏は語ります。
サンクスギビングについてクンプ氏の娘は、今度は自分たちが休暇の集まりを計画する番であると提案し、クンプ氏もそれに同意しました。

出典 2019年12月6日更新 WebMD『Stress, Sadness Really Can Break Your Heart』(2020年1月2日に利用)
https://www.webmd.com/heart-disease/news/20191206/stress-sadness-really-can-break-your-heart