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エソメプラゾールと低用量アスピリンは、食道がんリスクを軽減する可能性

2018年の臨床腫瘍学会年次総会で発表された第III相臨床試験の結果によると、バレット食道と診断された患者が
2つの市販薬、高用量エソメプラゾールと低用量アスピリンを定期的に、最低7年間摂取した際、高悪性度食道がんリスクが軽減されたそうです。

これら2つの薬が全死因死亡率を減らすことができることが示された会議では、ASPECT試験の結果が議論されました。
プロトンポンプ阻害薬(PPI)であるエソメプラゾールは胃酸の生産を抑える作用があり、1日2回40mgの高容量で投与されました。
もう1つの薬であるアスピリンは、低用量で使用されました。

研究チームは、標準用量のエソメプラゾール(1日1回20mg)を高用量のエソメプラゾールと比較したところ、
高用量のエソメプラゾールでは、8~9年目の中間検査時に、食道がんもしくは抗悪性度異形成の診断を受けた後何らかの原因により死亡するまでの時間が大幅に改善されたことがわかりました。
高用量のエソメプラゾールを使用した薬の組み合わせは、標準用量のエソメプラゾール単独と比較して、死亡リスクの低減に最も効果的でした。

バレット食道のある人は、食道癌のリスクが高くなります。
これは、長期的な胃食道逆流症(GERD)により胃酸が食道の扁平上皮を傷つけ、病変が治癒する際に円柱細胞が扁平細胞に置き換わることでおこります。
バレット食道は人口の約2%に見られ、80~90%のケースで食道がんを引き起こします。

アイルランドにある外科医師会の副総長兼、国立医療技術評価機構の臨床顧問コンサルタントであり、筆頭著者のジャナズ・ジャンコスキ氏は、
この研究で明らかになった事実は、発生頻度が稀であるため些細なものみ見えるかもしれませんが、患者に与える影響は大きいです。食道がんの生涯リスクは2%です。
今回のような研究では、がんに関連した死亡の1例を予防する前に、治療が必要な患者数、もしくは治療必要数(NNT)が計算されます。
ジャナズ氏は、治療必要数(NNT)は高用量のエソメプラゾールにおいて34分の1、低用量アスピリンにおいて43分の1であると説明しました。

国立がん研究所の監視、疫学、最終結果データ(SEER)によると、この食道がんの事例の5年の生存率は19.2%であると言います。
SEERはまた、今年は推定17,290人が新たに診断を受けたとしています。
キャンサー・リサーチUKによると、今年新たに9,211件のがんが確認されていると言います。
ジャンコスキ氏は、過去40年間で食道がんの予後はあまり改善されていないと説明します。

このASPECT試験では、1999年以来、カナダとイギリスの患者が採用されました。
これらの患者は、試験開始時に1cm以上のバレット食道を有し、試験開始時には食道がんや高悪性度異形成を有していませんでした。
カナダでは、2,563人の患者に高用量または低用量のエソメプラゾールを単独で、または300mgもしくは330mgのアスピリンが組み合わせて投与されました。
患者は8〜10年間薬の服用を続けました。
この試験では、薬による副作用は非常に1%と少ない結果になりました。
ジャンコスキ氏は、がんや病気を予防する薬は長期間服用する必要があり、リスクを超える安全性の証明が必要となるため、これは重要な発見であると説明しました。

出典:2018年7月5日『Esophageal cancer risk could be reduced by esomeprazole and low dose aspirin』News Medical Life Science(2019年4月4日に利用)
https://www.news-medical.net/news/20180605/Esophageal-cancer-risk-could-be-reduced-by-esomeprazole-and-low-dose-aspirin.aspx