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アルベンダゾールによるエキノコックス症治療について

アルベンダゾールは1982年より人体への使用が開始され、1980年代半ばからエキノコックス症の治療に使用されてきましたが、腸管蠕虫感染症の治療目的では、ほとんどの場合、単回投与のみが承認されています。したがって大半の国では、服用量は1回400mgを1錠または200mgを2錠のみの表示が可能となっています。しかしアルベンダゾールは、いくつかの寄生虫症に対して複数回投与による治療が推奨されており、非標準的な方法での投薬が必要となるケースがしばしばあります。 さらに、複数回投与の表示が可能な場合においても、承認された表示方法では、現在推奨されている長期療法の内容と一致しません。これは、エキノコックス症患者の治療を必要とする人々に対する重大な課題提起となります。

この問題についてManciulli氏らは、イタリアのようにアルベンダゾールが理論的に入手可能であっても、常に入手できる訳ではなく、供給が断続的であったり、薬を得るために相当な努力が必要とされていると述べています。不規則な治療はその有効性において理想的であるとは言えず、結果として一部の患者において薬の有効性が低下したり、治療が長期化することが予想されます。この問題はエキノコックス症の発症がある多くの国で報告されている為、分離された問題ではありません。エキノコックス症患者および医師は、不規則な間隔で少量の商品提供を行う製造業者に依存している為、薬の調達や補給が難しく、経済的にも困難な状況に置かれています。現地で即座に薬を入手できない場合、病院や患者は今日では主にインターネットを使い、国外の薬を探すことが唯一の選択肢となります。対照的に、アルゼンチンや中国などの国々ではアルベンダゾールの需要が非常に多い為、主に現地で薬を生産することで十分な供給を確保する手段が取られています。

上記は、主に優れた医療設備があり、複数用量の医薬品販売が可能な先進国における状況です。しかし、多くの開発途上国では複数用量の医薬品が販売されていない為、一般市場で購入した場合高額であり、エキノコックス症やその他全身性寄生虫症の治療に適応しない1錠分のパッケージを購入しなければなりません。こうした1錠毎に包装されたアルベンダゾールは、先発品および後発品(ジェネリック医薬品)を製造する多数の業者から広く入手可能です。ジェネリック医薬品は先発品よりも安価である可能性がありますが、有効であるという十分な品質保証はありません。
Gallia氏によってジェネリックのアルベンダゾール錠サンプルの無作為な分析、溶解および崩壊テストが行われたところ、先発品と類似した結果を示すジェネリック医薬品と、そうでないものが確認されました。本研究は数年前に実施されましたが、それ以降状況の変化は見られない一方、ジェネリック医薬品の数は大幅に増加しています。最近実施された研究では、先発品のアルベンダゾールとネパールで製造された2つのジェネリック医薬品を、薬剤の性質と土壌伝播蠕虫感染症への有効性の2点について比較したところ、これら2つのジェネリック医薬品は先発品に比べて効能において多少の違いが確認されましたが、エチオピアで行われ同様に2つのジェネリック医薬品を比較した別の研究では、薬の効果の違いは錠剤の溶解および崩壊の仕方の違いによるものであると結論づけられています。米国薬局方で定義されているような明確な方法を用いて、ジェネリック医薬品の医薬品特性を調べることは可能ですが、医薬品の有効性を確認する簡単な方法は無く、実地試験を行う他ありません。この方法は土壌伝播蠕虫感染症においては可能性がありますが、エキノコックス症には当てはまりません。エキノコックス症については、証拠に基づいて合理的な治療診断を提供することさえ困難であることが判明しています。したがって代替の供給源を確立する際は、アルベンダゾールの品質と製造元を考慮する必要があります。

アルベンダゾールの供給が確保されている地域でさえ、薬の販売表示に関する未解決の問題が残されています。ヨーロッパやその他地域で販売されている複数用量パッケージには、28日間単位、最大3サイクルでの服用指示が記載されています。これは、アルベンダゾールが最初にエキノコックス症治療薬として登録された1980年代当初より変わっていません。過去25年間、アルベンダゾールを長期間継続使用する際は、毒性の有無をモニタリングするよう指示がされてきました。しかしこの指示に従うことは事実上未公認であり、一部の国では、医薬品の払い戻し防止の口実とされています。したがって、患者が適切な治療を受け、感染症が蔓延する国で治療に適したパッケージを可能にする為には、複数用量のパッケージに関する処方情報を改定する必要があります。

長期投薬用のアルベンダゾール供給不足の問題に対する解決策を見出すことは、伝統的な公衆衛生アプローチにおいて単純なことではないようです。世界保健機関(WHO)によって作成された技術マニュアルには最良のアドバイスがありますが、薬物規制ルール外の記載となっています。(本マニュアルは2018年に更新予定です。)アルベンダゾールは発売後40年近く経ち、既存のジェネリック医薬品が数多く存在することで、それらの医薬品をひとつずつ国毎に変更する必要があるため、処箋情報の修正に時間と費用が費されにくい状況です。

したがって、全ての病院や療養施設が現行の推奨服用方法について認識し、地方当局がこれらの方法を受け入れ、従うように奨励することが必要です。アルベンダゾールの十分で適切かつ費用対効果の高い供給を確実なものにすることは、エキノコックス症患者および医師にとって引き続きの課題であり、また製造者は適切な用法を提供するよう奨励されなければなりません。でなければ、エキノコックス症は依然として見過ごされたままとなります。

The American journal of tropical medicine and hygiene, 2018年 8月 20日
http://www.ajtmh.org/docserver/fulltext/10.4269/ajtmh.18-0609/tpmd180609.pdf?expires=1535530620&id=id&accname=guest&checksum=E17D7F25A83B5D9B87441369081ADEEF