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アフリカでの調査:小児死亡率に対する抗生物質の影響

西アフリカのニジェールでは、医療従事者が定期的にアジスロマイシンを投与するようになり、おそらく腸内微生物の組成の変化が原因で死亡する  子供は少なくなります。

2000年代半ばに、研究者はエチオピアで臨床試験を実施し、トラコーマという、クラミジアトラコマチス菌によって引き起こされ、および世界中の感染症による失明の最も一般的な原因となっている病気を排除するために何が必要かを調べました。

彼らは、1歳から10歳の子供に対して、感染を取り除き予防するために抗生物質アジスロマイシンを投与するか、試験が終了するまで治療を遅らせるかのどちらかへ無作為に振り分けました。

治療を受けた子供たちの中ではトラコーマの症例ははるかに少なかったものの、トラコーマは致命的な病気ではないもののそれによる死亡も少ない ことがわかりました。

 「治療が遅れたグループでは、治療を受けたグループの2倍の小児死亡率が示されました。」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の  眼科医である、トーマス・リートマン博士はいいます。彼は、あの予期しない結果が報告された2009年の調査の著者でもあります。

抗生物質が死を正確に防いでいたかどうかは明らかではありませんでした。

アジスロマイシンは、眼、呼吸器、胃腸の感染症などの治療に広く使用される抗生物質であるため、研究者はこれらの感染症の減少が寄与している可能性があると仮定しました。

 2014年、リートマン博士のチームは、ニジェール、マラウイ、タンザニアといった地域で、トラコーマの有無にかかわらず190,000人以上の子供たちを 対象とし、半年ごとにアジスロマイシンまたはプラセボのいずれかを服用した、はるかに大規模なランダム化試験での実験を始めました。

繰り返しますが、薬剤の投与を受けた地域では死亡率が13.5%減少し、アジスロマイシンにより命が救われているように思えました。

「子どもの健康、特にサハラ以南のアフリカでの子どもの生存率を研究している私たちは、このような顕著な死亡率に対するメリットが示された     よくできた試験を長い間見たことがありませんでした。」

と調査に参加しなかったワシントン大学の疫学者であるパトリシア・パヴリナック博士は言います。

「そして、もちろん、みんなその死亡率が低下した理由を理解したいと思っています。」

 

リートマン博士と博士のグループは、この新しい試験を開始したときには同じ疑問を念頭に置いていました。

研究の開始時と最終治療の6ヶ月後、彼らはアジスロマイシンまたはプラセボを2年に1回の割合で投与された1歳から5歳までの600人の子供の   『直腸スワブ』を順列しました。すべての子供はニジェール出身ですが、この国は10%の子供が5歳の誕生日を迎えることができません。

彼らは、下痢を引き起こすことが知られているカンピロバクター属の2種を含んだ、35種の細菌の減少を発見しました。

そして、今週(8月12日の週)Nature Medicineで結果を報告し、微生物叢の組成のこういった変化が抗生物質を投与した後の子供の死亡率の低下に貢献する可能性があることが示される予定です。

「この研究は、なぜそれが子供の死亡率の改善にメリットがあるのかという理由についての説得力のあるメカニズムを提供している初めてのものです。」とパブリナック博士は言います。

 

研究共著者である、UCSFのトゥイ・ドアン氏はThe Scientist(本誌)に次のように話しています。

「未就学児へのアジスロマイシンの半年に1回の配布は、少なくともニジェールにおいては行われていますが、現時点では他の国で普及させることはできないようですが、胃腸の病原体を減らしています。しかし、抗生物質耐性によるコストの増加は犠牲にしているようです。」

彼女のグループはまた、抗生物質治療がアジスロマイシンおよび類似の抗生物質に対する耐性を与える遺伝子の発現を増加させることも示しました。一方でプラセボ治療ではみられませんでした。

抗生物質耐性が増大するという脅威は、アジスロマイシンの大量投与を推奨する政策を採用することにはリスクが伴うということを意味します。

「抗生物質耐性への懸念のため、アフリカの国々でこの介入を実施することに非常に懸念を示している人が多くいます。」

とパヴリナック博士は本誌に語ります。

「ここには倫理的なジレンマがあります。私たちには効果的な介入があるため、今は子供の命を救えていますが、そのグループでは耐性を誘発するリスクがあります。つまり、この介入は5年後、10年後の子供の命を救えないかもしれないのです。正しい答えはありません。」

「欧米では、長年、抗生物質の使用によるメリットがありました。 なので誰が子供たちにこの薬を使ってはいけないと言えましょうか。」

と、クイーンメアリー大学ロンドンに所属する微生物学者であり、作業に関与していなかったブリティッシュコロンビア大学のルアイリ・ロバートソン博士は述べました。

 「当面、抗菌薬耐性のこの巨大な世界的脅威に対処する方法を考え出す努力を続ける必要があります。」

ドアン氏によると、考えられる回避策の1つは、腸内微生物叢にすでに存在するカンピロバクターの感染を治療するために抗生物質を使用する     代わりに、カンピロバクターの感染を減らす方法を開発することです。

研究チームは、抗生物質耐性を高めるリスクを低下させる方法を開発することを目標に、微生物叢の変化が死亡率にどのように影響するかをさらに調査しています。

 「特に効果のどの部分がカンピロバクターであったかを見つけることができれば、カンピロバクターをより具体的に標的とし、他の生物の抵抗性を低くすることができるでしょうに。」

とリートマン博士は言います。

 

【以下のウェブサイトより引用】

Trial in Africa Probes Antibiotic’s Effects on Child Mortality

The Scientist