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免疫システムにおけるダイダロスのジレンマ

私たちの免疫システムは絶えずバクテリアやウイルスと戦っていますが、その間に過剰反応と過小反応のバランスが重要です。この均衡作用が分子レベルでどのように調節されるかは、今のところほとんど理解されていません。ウィーン大学の科学チームが初めて得た研究結果では、A型連鎖球菌に対する防御において、2つの免疫物質の完全に同期した相互作用が重要であると報告しています。

私たちの免疫システムのジレンマは、ギリシア神話のイカルスとダイダロスの話に匹敵します。自分自身と息子であるイカルスが捕らわれから脱出するために、ダイダロスは羽と蝋燭で翼をつくりました。 ダイダロスは息子に、高く飛んでも低くとんでもいけないと警告しました。
そうしないと太陽の熱や海のしぶきが翼を破壊し、墜落してしまう。
彼らはラビリンスから脱出した後、警告を無視したイカルスはより高く飛び、太陽がイカルスの翼のワックスを溶かし始め、ついには海へ墜落してしまいました。

それと同じ様に、私たちの免疫系の過剰または過少反応は、生命を脅かす可能性があります。

分子IL-1βはバクテリアに対するバランスの取れた防御に重要な役割を果たします。
バランスの取れた免疫応答を確保する分子はどれでしょうか。
ウィーン大学のマックスFペールツ研究所のパベル・コバリク博士と彼のチームは、この問題に取り組んでいます。
「我々の実験では、扁桃炎の一般的な原因として最もよく知られているA型連鎖球菌の感染を模擬しました。しかし、場合によっては、深刻な侵襲性感染症を引き起こす可能性もあります。
関連する病害毒性ショック症候群や壊死性筋膜炎は致死的である可能性があります。」と、博士課程の学生で研究の第一著者であるヴァージニア・カステリア氏は、説明しています。

オーストリア科学基金FWFプロジェクトの資金提供を受けたプロジェクトの一環として、若手科学者は侵襲性連鎖球菌感染の分子レベルで何が起こるかを調べました。

彼女の研究結果は、分子IL-1βが連鎖球菌に対する防御において重要な役割を果たしていることを示しています。
少なすぎると細菌が優勢になり、血液中毒が起こり、過剰になると過剰な炎症を起こします。そして、どちらも致死的である可能性があります。

【スケールを変える:I型インターフェロン】
しかし、IL-1βの量はどのように規制されるのでしょう。
研究の代表者であるパベル・コバリク博士は次のように述べています。
「IFN-Iはウイルスとの戦いに役立つことは、昔から知られていましたが、バクテリアに対する防御の役割ははっきりしていませんでした。
我々のモデルシステムでは、初めて、細菌感染症においてもIL-1βの量を減らして過剰な炎症を予防することで細菌感染にも重要な役割を果たすことを示すことができました。」

【浸潤性連鎖球菌疾患を治療する新しい治療法】

これらの結果は、モデルシステムに加えて、IL-1βの量がどのように患者のバランスをとっているのか、それが感染の重篤度にどのように関連しているかを理解することが重要だとバージニア・カスティリア氏は次のように説明しています。
「我々のモデルでは、IFN-1効果が減少すれば、IL-1β合成阻害剤による治療は良好な効果をもたらし、バランスが回復することが示されています。
人間は、これらの治療法と同様の治療法を試すことができます。」
今までのところ、深刻な浸潤性連鎖球菌感染症は対症療法のみで治療することができます。抗生物質は初期段階でのみ役立ち、抗炎症剤はほとんど効果を示しません。そしてしばしば行われる唯一の方法は、炎症組織を広域にな除去することです。そのため、パベル・コバリック博士と彼のチームにはまだまだたくさんの課題があります。
バージニア・カスティリア氏は、感染生物学に関連する問題にも引き続き取り組んでいます。

(記事元)http://medicalxpress.com/news/2016-03-daedalus-dilemma-immune.html