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なぜ雷雨が喘息患者にとって致命的となり得るのか

私の診療所で日常的にみられる疾患のひとつは喘息であり、患者の症状は軽度なものから命にかかわるようなものまで様々です。
しかし、喘息患者の多くはその日の天気予報が彼らにとって悪いニュースである可能性について考えたことはないでしょう。

最近オーストラリアを襲った致命的な「雷雨ぜんそく」による死亡者数は現在8人とされ、史上最悪であると言われています。(今後増える可能性もあります。)
過去に発生したより深刻な雷雨ぜんそくとしては1994年にロンドンで640人が発症した事例があり、これは致命的ではありませんでした。

近年、喫煙や大気汚染レベルが低下してきたにもかかわらず、原因不明の喘息の増加が見られています。
しかし現在、特定の雷雨が深刻な喘息発作や入院と強く関係している可能性が広く認識されており、確実な理由は明らかになっていないものの、これはいくつかの要因の組み合わせにより引き起こされている可能性があります。

草花粉や真菌胞子が大気中に放出されるには嵐が起きる前に十分に湿度が高い必要があるため、規模の小さい雷雨は、喘息を引き起こさない傾向にあります。
大きな雷雨が頭上を通過するとき、花粉や胞子が空に舞い上がり、湿度の高い雲によってこれらの花粉や胞子が、肺の奥に到達するのに十分な程細かく砕かれます。

これらの粒子はその後、冷たく乾燥した空気の流れによって地上に戻されます。
花粉には強いアレルギー物質が含まれるため、それらの影響を受けやすい人が花粉に触れると、重度の喘息反応が起こります。

喘息は、呼吸困難や咳の発作を繰り返す慢性疾患です。
喘息患者の気道は炎症を起こし、腫れて敏感になっています。
彼らは特定の物質を吸い込むと強い反応を示す傾向にあり、気道が反応すると、周りの筋肉が収縮します。
これにより気道が狭く、肺に流れ込む空気が少なくなり、腫れが悪化して気道がさらに狭まります。
気道の細胞により、通常より多くの粘液を生成されることがあります。
粘液はべたつき粘度が高いため、気道をさらに狭めることがあります。

この連鎖反応により、気道が炎症するたびに喘息症状が出ることなり得ます。

喘息は年齢によらず発症することがありますが、患者の50%は子供であり、ほとんどが10歳以下の男の子です。
成人では、女性の方が男性よりも発症しやすい傾向にあります。

警戒信号としては、吸入薬の効きが通常よりも弱くなる、労作時に咳や喘鳴が起きる、喘鳴や咳によって夜間に目が覚める、ピークフローメーターの測定値が低下する(ピークフローメーターとは、息を吐き出したときの最大呼気流量を計測する簡易装置です。)などがあります。

危険信号としては、肌色が青ざめ息が切れる、発話が困難もしくは不可能なほど極度な疲労がある、混乱や情動不安がある、などの症状が挙げられます。
これらいずれかの症状が起こった場合は、直ちに医療処置を受ける必要があります。

喘息発作を避けるには、空に雷雨が見られなくても、可能であればアレルギーを引き起こす物質を避けましょう。
どの物質がトラブルの元であるのかを判断するのは難しいことがありますが、タバコの煙などの一般的な刺激物は避けるべきです。

体調が悪くなくても、処方された予防薬を服用することは重要です。
もし重度の発作が起きた場合は、かかりつけの医師か救急医療サービスに連絡してください。
治療方法についてかかりつけの医師や専門家とし相談しましょう。
例えば風邪をひいている最中に症状が悪化した場合の対応策などを知っておくべきです。
発作中に喘息の深刻度合を測るのに役立つピークフローメータの使用方法を熟知し、吸入器を正しく使うようにしましょう。

喘息は、できるだけ早期に治療しましょう。
迅速で効果的な治療により、症状の悪化を防げる可能性があります。
また、念の為空に目を向けて雷の雷鳴に耳を傾けると懸命かもしれません。

出典:2016年12月2日更新 Health Spectator UK 『Why thunderstorms can be deadly for asthma sufferers』(2019年5月14日に利用)
https://health.spectator.co.uk/extreme-weather-can-deadly-asthma-sufferers/