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SGLT2阻害剤は、糖尿病だけでなく心疾患への適用も整いつつある

‐心臓病専門医は、おそらくHFpEF(拡張不全)においてさえも、より広範な使用も視野に入れています‐

 

先週のDAPA-HF試験でのダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の大きな成功で拍車がかかったナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤は、駆出率の低下を伴う心不全(HFpEF)での広範な使用への準備段階であり、左室駆出率(EF)が保たれた心不全である場合でも注目されて    います。

この2型糖尿病薬の一部の薬剤には心血管予防での適応がありますが、DAPA-HF試験は、糖尿病の状態が心不全の利益には関係ないと示唆することで形勢を変えました。

 

フランス・パリで開催された欧州循環器学会で9月1日に報告されたDAPA-HF試験は、ダパグリフロジンがプラセボと比較して、心不全および心血管 疾患による死亡の悪化リスクを相対的に26%低下させることを示しました。

効果の大きさは、2型糖尿病の人と2型糖尿病ではない人で類似していました(HRはそれぞれ0.75と0.73)。

「そのため、これは現在、心不全の予防、心血管疾患、そして、駆出率を低下をさせて全ての心不全の全原因の死亡率を低下させるため、ベータ   遮断薬やアルドステロン拮抗薬などの他のクラスの薬剤に加えられます。」

カリフォルニア大学ロサンゼルス校のグレッグ・フォナロー博士は本誌に語りました。

糖尿病のアウトカム試験で見られた全体的な心血管の利点に基づいて、アメリカ心臓病学会は、昨年、これらの薬剤の処方において心臓専門医が より大きな役割を果たすことを推奨しました。

しかし、最近の研究では、内分泌専門医はSGLT2阻害剤の処方率は40%、心臓専門医はわずか5%を処方しているということがわかりました。

「これらの新しい発見は、心不全患者のケアに関与するすべての医師が、禁忌のない適格な患者にこれらの薬剤を処方するべきであることを明確に しています。」とフォナロー博士は述べました。

唯一の禁忌は、1型糖尿病と重度の慢性腎疾患(eGFR <30)または透析を行っている末期の腎疾患です。これらのグループは試験から除外されて  います。

 

心不全(HF)の区別

心不全での効果という点で、SGLT2阻害剤は2型糖尿病薬の中でトップになりました。

最近のメタ分析ではSGLT2阻害剤カナグリフロジン(インボカナ)およびエンパグリフロジン(ジャディアンス)は、プラセボと比較して、2型糖尿病の 他の治療薬よりも心不全のリスクが相対的に44%減少しました。

「他の糖尿病薬を見る限り、それは価値があるかもしれませんが、残念ながら、SGLT2の心血管系での利点のメカニズムがわかるまでには時間が 必要かもしれません。」

と、テキサス州ラウンドロックにある、Baylor Scott&White Healthcareのアルバート・ヒックス博士は述べました。

SGLT2阻害剤は、アテローム性動脈硬化症ではなく心不全を主に予防することで心血管疾患に影響を与えるとシカゴのノースウェスタン大学    ファインバーグ医学校のドナルド・ロイドジョーンズ博士は述べています。

「このクラスの薬剤が大部分の心不全を防ぐ理由は、良好に作用する利尿薬であるということです。」

「なぜ利尿薬は高血圧に効果があるのでしょうか。」と彼は述べました。

「すでに心不全の症状を示しているのにそれに気づいていない人が多いからです。そういった人の数を減らすと、心不全による入院を防ぐことができるのです。それがまさにSGLT2阻害剤の用途であり、心不全予防に強力に効果的となる理由です。」

しかし、このクラスの薬剤には利尿作用があるものの、全体での効果については語れないかもしれないとミシシッピ大学のジェイブド・バトラー博士は言います。

「これらの薬剤で見られるすべての心疾患での利益は、おそらく利尿作用だけに起因するものではありません。そうでなければ、フロセミド(商品名:  ラシックス)のような他の「通常の利尿薬」でも同じことなのです。」

「SGLT2阻害剤はおそらくフロセミドほど効率的な利尿薬ではないものの、おそらくヒドロクロロチアジドよりも効果は高いと思われます。」

とロイド・ジョーンズ博士は述べました。

「心不全のリスクがあると考える場合、最終的には糖尿病患者と非糖尿病患者で果たす役割があると思います。」

彼は、尿路感染症が主要な安全性の問題であることに留意しながら、低血糖に関してSGLT2阻害剤のかなり良好な安全性プロファイルについて指摘しています。

「SGLT2阻害剤で早期に治療を開始することで血糖値を治療したり、リスクを軽減したりする場合、ラシックスはそれほど必要ではなくなるかも     しれません。」と彼は述べました。

「フロセミドには、投与しすぎると低カリウム血症、低ナトリウム血症、腎機能障害の問題があります。そのため、SGLT2阻害剤心不全予防のためには良い中間ステップになると思います。」

 

すべて同じですか?

SGLT2阻害剤の中で、心不全にはクラス全体で効果があるように見えますが他のものより効果的であるものあるとヒックス博士は述べています。

それは、心不全のベータ遮断薬にも当てはまることを彼は指摘しました。

「私たちはSGLT2でも同じであると考えています。いくつかの薬剤は他よりも心不全に効果があります。」

2型糖尿病治療用に承認された4つのSGLT2阻害剤のうち3つは、FDAが義務付けた心血管予後試験の結果を既に報告しておりすべて心血管死、  心筋梗塞、そして、脳卒中の主要エンドポイントを持っています。

EMPA-REG試験とCANVAS試験では、2016年のエンパグリフロジンと2018年のカナグリフロジンの2型糖尿病における心血管疾患予防の適応に   つながる心血管での重要な利点が見つかっています。

また、ダパグリフロジンのDECLARE-TIMI 58試験は、その優位性を検証することが強化されましたが、それは発見されませんでした。

心不全による入院は、これら3つの試験すべての副次的または探索的エンドポイントとして含まれています。

ダパグリフロジン :27%の削減

エンパグリフロジン:35%削減

カナグリフロジン :33%削減

 

最近承認されたSGLT2阻害剤であるエルツグリフロジン(ステグラトロSteglatro)は、2017年に2型糖尿病の治療に有効であることが示されましたが、心血管転帰試験であるVERTIS CVの結果を待っている状況です。この試験の完了は12月に予定されています。

 

今後の展望

「これはこの数年間で、収縮期心不全における最初の新しいクラスの薬剤であり、間違いなくガイドラインと臨床診療の変更につながるでしょう。」

と、英国インペリアルカレッジロンドンのマーティン・カウイ博士はDAPA-HFの調査結果が発表された後に述べました。

また、間違いなくガイドライン委員会は、調査結果が公表されるまで待ってから行動を起こすだろうと、シカゴにあるノースウェスタン大学        ファインバーグ医学校のクライド・ヤンシー博士は述べています。

アストラゼネカ社は、糖尿病以外の心不全の適応については言及を避けています。

「このケースは、FDAの基準は、ガイドラインの基準とは異なる可能性がありますが、今日の様子では心不全のSGLT2阻害剤療法の適応につながる可能性があります。」

とヤンシー博士は述べました。

「DAPA-HFとSGLT2阻害剤クラスの他の心不全関連データが豊富にあることは、心不全へのラベル表示を保証するのに十分である可能性があることを意味します。」

ダパグリフロジンにとって、次の課題はこれらのHFrEFでの利点がHFpEFにまで及ぶ可能性があるかどうかであり、その答えはDELIVER試験で2021年に得ることができるでしょう。

エンパグリフロジンについて、EMPEROR-REDUCED試験は、HFrEF患者の心血管死と心不全入院を評価しており、2020年半ばに結果が得られる予定です。

また、2020年11月に完了する予定のHFpEFの試験EMPEROR-PRESERVEDも進行中です。

 

【以下のウェブサイトより引用】

SGLT2 Inhibitor Poised to Reach Beyond Diabetes Into HF

MEDPAGE TODAY