睡眠が最高の鎮痛剤である理由

『Journal of Neuroscience』誌に発表された新しい研究では、睡眠不足が脳の鎮痛反応を麻痺させることによって疼痛に対する感受性を高めることがわかっています。
米国の成人の3人に1人、または成人人口の35%の人は十分な睡眠が取れていません。
睡眠不足の脳への影響は、衰弱のような状態が見られる認知障害の誘発から、新しい記憶を学び、形成する能力を妨げるといったことまで、数多くあります。

新しい研究では、睡眠不足によるもう1つの神経学的影響が浮き彫りにされました。 それは痛みに対する感受性が高まるということです。
睡眠不足は、痛みを和らげるための脳の自然なメカニズムを損ないますが、新しい研究により、睡眠不足による健康への危害、慢性疼痛、および処方オピオイド中毒の間での潜在的な関連に注目が集まっています。
最近の推計によれば、米国では人口の20%以上、またはおよそ5000万人の成人が慢性的な痛みを抱えて生活しています。 疾病管理予防センター(CDC)は、米国では平均して毎日およそ130人がオピオイドの過剰摂取で死亡していると報告しています。  
この研究はカリフォルニア大学バークレー校の神経科学および心理学の教授であるマシューウォーカー博士は、博士候補生のアダム・クラウス氏とともに行われました。  

睡眠不足が疼痛感受性に与える影響
ウォーカー氏とクラウス氏は、24人の健康な若い研究参加者の足に熱を加えることによって痛みを誘発しました。
そしてその実験を行ったときに、科学者たちは参加者の脳をスキャンし、痛みを処理する回路を調べました。
参加者は、研究開始時には、睡眠障害や疼痛関連疾患はありませんでした。
科学者たちは、参加者の皮膚に熱のレベルを上げながら脳を機能的MRI装置でスキャンすることによって、快適な睡眠の後に各参加者の痛みの閾値を記録することから始めました。
科学者たちはその人の痛みの閾値を設定した後、徹夜後にその手順を繰り返しました。
「グループ全体で、参加者はより低い温度で不快感を感じていました。 これは、睡眠が十分取れなかった後に痛みに対する彼ら自身の感受性が高まったことを示しています。」 と、研究の主執筆者であるクラウス氏は報告しています。

「傷害は同じです、しかし違いは十分な睡眠がとれていない状態で脳が痛みを評価する方法です。」と彼は説明します。
研究者らは、疼痛過敏性に関連する領域である脳の体性感覚皮質は、参加者が十分に眠れなかったときに活動亢進していることを見出しました。
これは、睡眠不足が疼痛処理神経回路を妨害するという仮説を裏付けました。

しかし、驚くべき発見は、脳の側坐核の活動が前の晩によく眠れなかった時には通常より低いということでした。 側坐核は神経伝達物質であるドーパミンを放出し、それが喜びを増し痛みを和らげます。
「睡眠障害は脳内の疼痛を感知する領域を増幅するだけでなく、生来備わっている脳の鎮痛作用も阻害します。」とウォーカー博士は説明します。

最後に、研究者たちは、痛みの信号を評価し、痛みに対する体の反応を準備する脳の島もまた、機能しないことを発見しました。
「これは疼痛信号を評価して分類し、身体が備え持つ鎮痛作用を救助することを可能にする重要な神経システムです。」とクラウス氏は指摘します。

「睡眠は自然の鎮痛剤なのです。」
彼らの調査結果を再現するために、研究者たちはアマゾンメカニカルターク、オンラインマーケットプレイスに登録されている230人以上の成人の調査も行いました。

参加者は、数日間にわたる睡眠パターンと疼痛感受性レベルを報告しました。
科学者らは、参加者の睡眠パターンの最小の変化が疼痛感受性の変化と相関することを見出しました。
「結果は明らかで、私たちの多くが結果の観点からはほとんど減っていないと思われるような夜間の睡眠の非常にわずかな変化でさえ翌日の痛みの感じ方に明らかな影響を与えることを示しています。」とクラウス氏は言います。

ウォーカー博士はこの調査結果について次のように述べています。
「ここで楽観的に考えると、睡眠が自然な鎮痛剤であり、(薬を飲まずとも)痛みの管理と軽減に役立つ可能性があるということなのです。」
「それでも皮肉なことに、人々が最も苦痛を感じている環境の1つが、睡眠にとって最悪の場所である、病院の騒がしい病棟なのです。」
「我々の調査結果は、熟睡が健康管理の不可欠な要素として受け入れられれば、患者のケアは著しく改善され、病院の満床状態を改善できるということを示唆しています。」  

【以下のウェブサイトより引用】