てんかんを治療するために脳の半分を除去するとどうなるか

  • 新しい研究では、脳の右もしくは左半分を外科的に取り除く、もしくは切断する大脳半球切除術の長期的な影響を調べました。
  • この手術は、主に重度のてんかんがある幼い子供に対して行われ、認知機能の発達保護を目的としています
  • 研究者は、若い脳の可塑性がいかにして子供の重度の障害回避に役立つかを研究しています。

てんかん発作は子供の脳に壊滅的な影響を与えることがあり、重度の場合、医師が脳の一部を取り除き、この影響を止めようとすることがあります。

この場合、医師は大脳半球切除術という、脳の右もしくは左半分を外科的に除去もしくはもう片方から切断する手術を行います。

しかし、成長中の子供の脳の半分が取り除かれると、何が起こるのでしょうか?

新しい小規模研究が今週journal Cell Reports(細胞レポート誌)にて発表され、この研究はこうした子供達、および彼らが成長して成人になる過程に焦点を当てていました。

調査結果では、残った脳の半分が、様々な脳機能ネットワーク間における異常に強力な繋がりを構築している可能性が示唆されました。
これにより、脳があたかも無傷であるかの様に体が機能することに役立っている可能性があります。

こうした現象が発生する理由としては、患者が十分に若い場合、体が神経機能の一部を、損傷のある切断された、もしくは取り除かれた半分の脳からもう片方の脳に移すことで補う可能性があります。

「今回の研究対象となった大脳半球切除術を受けた人は、見事に高い機能を持ち合わせていました。」と、ドリット・クライマン博士は声明の中で述べています。
彼は、この研究の筆頭著者であり、カリフォルニア工科大学の博士研究員です。

「コンピューターの前に座り脳の半分のみを映したMRI画像を見ていた時」と、彼女は続けました。
「この画像が同じ人間のものであることに驚きました。たった今その人が話して歩いている所を見たばかりであり、彼らは研究のために時間を割くことを自ら選択したのです。」


<ネットワーク間の繋がり>
この研究を実施する為、クライマン氏らは、6人の高機能成人を募りました。
彼らは、てんかん発作を治療するために、子供の頃に大脳半球切除術を受けていました。
また彼らは、大脳半球切除術を受けていない、健康的な成人6人を別途募りました。

研究者は各被験者に、fMRI装置の中で横になってリラックスするよう指示しました。
この装置は、被験者の脳活動イメージを作成するものです。

大脳半球切除術を受けた人とそうでない人の脳活動を比較した所、研究者は彼らの脳領域内で類似した繋がりを見つけました。
一般的にこの領域は、同一の脳機能ネットワークに関与しています。
しかし、大脳半球切除術を受けた人は、様々な機能ネットワーク間の脳の繋がりが一般的に強い傾向にありました。

さらなる研究が必要ではあるものの、ネットワーク間の繋がりが、脳が片方の半球で失われた機能を補うのに役立っている可能性があります。

「私たちは、残された半球内のこの繋がりがどのように再編成し、機能するのかについて考え始めたばかりです。」と、ウィリアム・ビンガマン博士はHealthlineへの取材に答えました。
彼はクリーブランドにあるクリーブランドクリックでてんかん手術部門の責任者を務めています。

「この研究は、こうした現象が起きる理由について考える上で役に立つという点で重要だと考えます。」と、ビンガマン氏は付け加えました。
彼は、この研究に携わっていません。


<薬が効かない時>
脳の手術は劇的な治療アプローチであるかのように思えるかもしれませんが、複数の治療を試しても発作が起き続ける子供にとって、大きな効果があることがあります。

「(治療を検討するのは)たった一つの状況下においてのみであり、この状況というのはいわゆる難治性てんかんです。これは、薬で発作を抑制することができない状態を意味します。」と、シーン・レウ博士は言います。
彼は、ウィスコンシン小児病院の脳神経外科において医療ディレクターを務めています。

「こうした発作が片方の(脳の)半球の大部分に起因している場合、(大脳半球切除術)が唯一の、発作を止める手術となります。」と彼は続けました。

治療しないままでいると、発作が子供の脳にさらなる損傷を引き起こし、認知発達を妨げます。
これにより、さらに重度の障害が生じることがあります。

大脳半球切除術を行うと、発作が止まる可能性があります。
これにより、脳に、継続的に崩壊することなく、再構築し発達する機会が与えられる場合があるのです。


<手術の潜在的な効果>
大脳半球切除術を受けた人は、必ず機能的に制限されることになります。

例えば、脳の半分が損傷、切断もしくは除去されると、体の反対側の弱体化を引き起こします。
特に、片側の手足が弱くなります。
その他、片側の視覚の視力喪失が起こることもあります。

しかし多くの場合、大脳半球切除術の対象候補となる子供は、脳損傷もしくは発作を引き起こす障害の結果として既に一部の神経機能を失っています。

効果的な治療を行わない事には、さらに機能が失われるリスクがあるのです。

「子供に大脳半球切除術を受けさせる親から聞かれることが一番多い質問として、“子供は15~20年後どうなるのか”というものがあります。」と、ビンガマン氏は言います。

「そして、主な指標として発作が止まることがあります。発作を止められなければ、認知が損なわれ、予後も悪化します。」と彼は続けます。


<若い脳は可塑性がある>
大脳半球切除術の予後は、幼い頃に行われた場合最も良好である傾向にあると、レウ氏とビンガマン氏は言います。

これは、幼い時期の発達途中の脳は、一般的により可塑性があるためです。
結果として、若い脳は神経機能の一部を片側からもう片側へ移しやすい傾向にあります。

例えば、言語機能は一般的に脳の左側で発達します。
もし左側が損傷したり、切断されたり、なくなると、言語機能が右側にうつる可能性があります。
しかし、このような移行は、幼少期に変化が加えられた場合に起こりやすくなります。

「左側の大脳半球切除術を年をとってから行った場合、時期が遅すぎたことで、話すことができなくなる可能性があります。こうした機能はずっと左側にあり、それを切断してしまうのです。」とレウ氏は言います。

「しかし、これを3歳の時に行えば、脳にはまだ可塑性があるため、言語機能を脳の右側に発達させることができるのです。「と、かれは付け加えました。


<早期に治療を行う>
大脳半球切除術は若い患者において効果が高い傾向にありますが、多くの人がこの手術の選択に戸惑います。

「一般の人々にとって、こうした手術は非常に劇的で危険なように見えるかもしれません。そしてこの感覚により、多くの人が若い内に手術を行うことができなくなっています。」とレウ氏は言います。

「しかし、2歳の時に手術を受けた子供の生活の質は、16歳の時に手術を受けた子供のものよりもずっと良いのです。」と、彼は付け加えています。

ビンガマン氏は、この大脳半球切除術に関する研究によって、脳の可塑性やてんかん手術の潜在的な効果についての理解が深まることを願っています。

「これは素晴らしい手術であり、たくさんの子供に効果がある可能性があります。」と、ビンガマン氏は言います。

「私は、この種の研究は、情報を周知し、脳による再構成に関する理解を助けるものであると考えます。」と、彼は続けました。
「脳とは、驚くべき臓器なのです。」

出典: 2019年11月27更新 healthline『What Can Happen When You Remove Half a Brain to Cure Epilepsy』(2019年12月2日に利用)
https://www.healthline.com/health-news/heres-what-happens-when-you-remove-half-your-brain