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JapanRx / 薬によって、あなたの血液が蚊を退治できるようになるとしたら?

薬によって、あなたの血液が蚊を退治できるようになるとしたら?

出来すぎた話に聞こえるかもしれないが、魅力的な可能性です。
今週ランセット感染症ジャーナルに掲載された研究では、マラリアに対抗し得る新しい手段として、イベルメクチンの投薬を挙げています。
2000年代に実施された研究では、マラリアを運ぶ蚊がイベルメクチンの投薬を受けた個人の血を吸った後に死んだことが示されました。

マラリアは、世界で2億人以上の人々に影響を及ぼす蚊の感染症です。
これはマラリアを持った蚊が個体を刺し、マラリア原虫と呼ばれる寄生虫が広がることで感染します。
ヒトに感染すると、この寄生虫は発熱や頭痛、悪寒を引き起こし、さらには死に至ることがあります。

長年の発展途上国における撲滅努力が続けられてきましたが、マラリアを運ぶ蚊が、
それを根絶するはずであった殺虫剤に対して耐性を持ってきていることを示す研究が増えています。

リバプール熱帯医学校(Liverpool School of Tropical Medicine)の医学士、博士号取得候補者であるメノ・スミットしは、以下のように述べています。
「2015年以降、マラリアによる年間死亡者は一定して推移しています。」

また、こう続けています。
「現状何も進歩がありません。新しい解決策が必要であり、それはイベルメクチンかもしれません。」

イベルメクチンは1980年代初めに、河川盲目症や象皮病を引き起こす寄生虫に対抗するための薬として開発されました。
スミット氏と彼の同僚は、これがマラリアの根絶にも役立つことを望んでいます。

彼らの研究では、高用量のイベルメクチンを3回投与することで、治療開始後少なくとも28日間、ヒトの血液が蚊の殺虫効果を持つことが実証されました。
この高用量のイベルメクチンはまた、耐容性も良好であり、副作用はほとんどありませんでした。

スミット氏は、次のように述べています。
「最も喜ばしい研究結果は、被験者がイベルメクチンを摂取してから1ヶ月経った後でさえも、彼らの血液は蚊に対する殺虫効果を有していたという事実です。」
また、こう続けました。
「これは予想よりもはるかに長い結果です。」

この結論に達するために、ケニアのジャラモリ・オジンナ・オディンガ・教育委託病院(Jaramogi Oginga Odinga Teaching and Referral Hospital)の研究者らは、
47名の被験者にイベルメクチン600μg配合の錠剤を3日間連続して投与しました。
その後これらの被験者から血液サンプルを6回採取し、ケージ内の蚊に与えました。。

「私たちは蚊が吸うことができるように人工膜に血液を入れ、その後の様子を観察しました。」とスミット氏は説明します。
そして、こう続けました。
「ほとんどの蚊が、血液を吸った後1週間以内に死にました。」

結果として、血液を与えられた後2週間の内に97%の蚊が死滅しました。

別のグループの被験者48名には、300μgのイベルメクチンが投与されたものの、蚊の死亡率はそれほど高くはありませんでした。

いずれも、通常使用されるよりも高い用量です。
1987年以来、寄生虫感染症の治療のために、25億件以上のイベルメクチン治療が施されてきましたが、一般的に1年間の使用量は200μg以下でした。

この研究でスミット氏は、3日間600μgを投与した際の耐容性は良好であったと述べています。
被験者の間で副作用はほとんど報告されていませんが、研究に携わった全員が入院し、マラリア治療を受けていることを認めています。

「被験者は既に具合が悪かった為、あまり副作用に気づかなかったのかもしれません。」と、スミット氏は説明します。
そして、以下のように続けました。
「私たちが確認できた優れた耐用性は、健康な人にも同様に見られるかどうかはまだ分かりません。」

スミット氏はまた、高用量のイベルメクチンは、すべての年齢層で安全であることを確認するために、子供を対象とした検査を行う必要があると付け加えています。

この研究に関与していないベイラー医科大学国立熱帯医学校の学部長であるピーター・ホテズ医師は、
イベルメクチンが全国的なマラリア対策プログラムの一部として考慮される前に、より大規模な研究が必要であると述べています。

しかしホテズ医師はNPR(米公共ラジオ局)宛に、次のようなメールを送っています。
「イベルメクチンは、マラリア対策と予防のための補完的戦略としての可能性を秘めていると思います。」
「この医薬品は、アフリカの集団投薬運動における使用実績があり、大変高い安全性を示しています。」

ただホテズ医師は、イベルメクチンには興味深い可能性があるものの、蚊が薬物耐性を得る可能性があり、ワクチンが未だ必要となるのは、これが理由であると話します。

この研究に関与していないハーバード大学のマラリア学者であるレジナ・ラビノビッチ医師は、
”やっかいな”病気に対する”不完全な道具”のひとつとして、イベルメクチンはマラリアへ対抗するために研究を続ける価値がある点に同意しています。
 
この研究に関する別の解説で、ラビノビッチ医師は、「マラリアに対抗するには、おそらく複数のアプローチが必要となるだろう」と書いています。
今後、蚊に対してイベルメクチンと似た効果を持ち、かつより長期的に効果が持続する新薬が開発される可能性がある、と彼女は話します。

彼女はNPRへのメールで、マラリアが蔓延している地域での試験の必要性を強調し、
また研究者は、イベルメクチンが蚊を殺すことでマラリアの感染を減らすことができることを確認する必要があると述べました。

NPR, goats and soda 2018年3月29日
https://www.npr.org/sections/goatsandsoda/2018/03/29/597996321/what-if-a-drug-could-make-your-blood-...