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飼い犬(そして、もしかするとあなた自身)の寿命を延ばす可能性のある薬

モモを見てください。

モモが走るのをを見てください。

モモが活力やエネルギー、若さに満ち、速く走れるようになったのを見てください。
そう、人間用に作られた抗がん薬を服用するモモの飼い主は言います。

「これは、驚くべきことです。」
Paola Anderson氏は、彼女の飼う13歳のポンスキーであるモモが庭を走り回り、自身の年齢の3分の1である若い犬に追いついている様子を見ながら言いました。

この薬はラパマイシンと呼ばれています。
10年近くに及ぶ研究では、マウスの寿命を60%近く延ばすkとが示されており、科学者らは犬や人間におけるアンチエイジング薬としての作用を模索しています。

ラパマイシンは50年以上も前に南太平洋に浮かぶイースター島の土より発見、カナダにある実験室で研究され、Arlan Richardson氏がこれまで見た中では、最も老化に対抗する見込みのある薬です。
レノルズ・オクラホマ・エイジングセンターのRichardson氏は、この種の研究を40年間も続けています。

「この薬は、私たちが知る中で最も有望です。」と彼は話します。

現在、科学者らは一歩前進し、犬を対象にしたラパマイシンの試験を行っています。

ワシントン大学にあるドッグ・エイジング・プロジェクトの研究者たちは、
16匹の犬にラパマイシンを投与し、その後各犬の心臓を撮像しました。

「心機能が改善し始めました。より若い犬のような見た目に変化し始めたのです。」
と、ドッグ・エイジング・プロジェクトの共同監督を務めたMatt Kaeberlein氏は述べています。Kaeberlein氏はこの研究を会議で発表しましたが、まだ公式な発表はしていません。

研究対象となった犬にラパマイシンが投与されたのは、10週間の間のみでした。
これよりもはるかに長い期間投与を受けたモモや彼の兄弟であるシェルマンには、次のようなことが起こりました。


- シェルマンとモモの物語
長年、モモとシェルマンはカリフォルニア州ラグーナヒルズにあるラグーナ・ペット・スパの顧客であり、スパでは入浴やトリミングを受けていました。

そして2010年のクリスマスイブ、モモとシェルマンの飼い主は彼らを置き去りにし、二度と帰っては来ませんでした。

このスパを運営するAnderson氏は、飼い主に電話したものの、回線が切られていたと言います。

Anderson氏は、恐怖を覚えましたが、ショックは受けていませんでした。
この事件は南カリフォルニアの住宅ローン危機のさなかに発生し、飼い主が犬を捨てて彼女に託したのはこれが初めてではありませんでした。

しかしこれは、差し押さえ以上の出来事でした。
シェルマンは重度の病気を患っていたのです。

あるクリスマスの日、8歳の小さいポメラニアンが嘔吐し、痛みにより吠えていました。
Anderson氏はこの犬を至急緊急室に連れて行ったところ、急性膵炎の発作であることがわかりました。

Anderson氏はこの犬を健康な状態に回復させ、彼女曰くモモとシェルマンの”母親”になったといいます。

この犬には、Anderson氏のパートナー、Sarah Godfrey氏という別の母親もいました。
彼女は北カリフォルニアに住んでいましたが、数年後Anderson氏と彼の”子供たち”と暮らすため、ラグーナヒルズに引っ越してきたのです。

2015年5月のある日、シェルマンが脳卒中で倒れるまでは、全てはうまくいっていました。

「手術をしない限り、後2週間の命だ」と言われたことを、Anderson氏は記憶しています。
手術を受けたとしても、生存率は20%に過ぎませんでした。

Anderson氏とGodfrey氏は、既に13歳となったか弱い犬が手術を受けることを危惧していました。
アメリカンケネルクラブによると、これは人間でいうと68歳に値します。

長年にわたって、このカップルは何か問題が起こると漢方医に頼ることが多く、この時も彼らの犬を助ける方法を求めて相談に行きました。
漢方医はこれについて調べ、可能な治療法を思いつきました。
これが、ラパマイシンだったのです。

Anderson氏とGodfrey氏は、喜んだと同時に懐疑的でもありましたが、インターネットで、ラバマイシン研究に参加できるイヌを募集していたKaeberlein氏とエイジング・ドッグ・プロジェクトを目にしました。

彼らはたKaeberlein氏とに、シェルマンをこの研究に参加させるように頼み込みましたが、答えはノーでした。
研究対象となるイヌは健康であり、体重40ポンド(約18キロ)である必要があったのです。
シェルマンは、このどちらにも値していませんでした。

Anderson氏とGodfrey氏は、次の方法を考えました。

「私たちは、メキシコに行きラパマイシンを得る、もしくはオンラインで注文することができることを知っていましたが、獣医師、専門家の指導を受けたいと考えていました。」と、Anderson氏は話しました。

これは、彼らが思っていたよりも難しいことがわかりました。

5人の獣医師は、この薬を処方することを拒みました。
最終的に、6人目の獣医師がラパマイシンの処方に同意しましたが、シェルマンに対する最善の用量についてKaeberlein氏に相談した後という条件付きでした。

この時点でシェルマンの脳卒中から1カ月が経っており、シェルマンはとても弱り、手からしか餌を食べることが出来ず、人の手を借りないと動くこともできなくなっていました。

しかしラパマイシンによって状況が一変したと、Anderson氏とGodfrey氏は言います。

「ラパマイシンを摂取した3日後、シェルマンは自力で食べることが出来るようになりました。7日目には、自力で歩けるようになったのです。」と、Anderson氏は述べています。

16か月後、余命2カ月であったこの犬は未だ生きており、老犬ではあるもののまだ活動的で、庭を走り回ることもできます。

このことで、モモについても考えるようになりました。
シェルマンのように病気ではなかったものの、13歳となったモモは、衰え、身体に痛みがあり、スタミナを失っていました。
このカップルは、モモにもラパマイシンを試すことを決めました。

「もしあなたの犬の寿命を延ばせるとしたら、そうしない理由はありません。」と、Godfrey氏は言います。

彼女は、薬を摂り始めて数日の内に、以前まで30分の散歩で疲れ果てていたモモが、数時間の間走ることが出来るようになったと言います。
CNNの取材班が訪れた夏の暑い日、モモはAnderson氏の両親が飼う4~5歳の犬に追いついて走ることができていました。

Anderson氏とGodfrey氏は、これ以上無く幸せでした。

「私たちは、シェルマンとモモをラパマイシン・ベイビーズと呼んでいます。」と、Godfrey氏は言います。


- しかし、落とし穴があります
ファイザー社製のラパマイシンや、ノバルティス社製のアフィニトール(エベロリムス)のラベルを見ると、これら二つの薬はラパマイシンと本質的に同じで薬であり、がん患者や臓器移植を受けた患者に使用されていることがわかります。
可能性のある有害な副作用のリストは、長く恐ろしいものでした。
これには、がん、糖尿病、感染症、その他様々あります。

「これらの副作用には注意すべきです。」と、Kaeberlein氏は言います。
しかし、こうした副作用は、彼がこの薬の研究を止める理由にはなりませんでした。

まず第一に、Kaeberlein氏はがん患者や臓器移植を受けた患者において見られるこうした副作用は、ラパマイシン自体によるものではなく、患者の病状がそもそも重症であったこと、もしくはその他多量の薬を併用していること、あるいはその両方が原因であると考えています。

第二に彼は、病気の人に使用される量よりもずっと低用量のラパマイシンを、彼の健康な犬に使用しています。

オクラホマ大学に務める老齢化の専門家であるRichardson氏は、Kaeberlein氏に同意しています。
Richardson氏は、偶然な事に同じモモという名前が付けられたKaeberlein氏の犬に低用量のラパマイシンが投与されたことに、非常に納得しています。

モモは心臓の問題があったものの、ラパマイシンを摂り始めた後安定したと、Richardson氏は述べています。
彼は、チベタン・テリアであるモモは、人間では80~90歳に値する年齢である14歳とは思えない程若く見えると話しています。

彼は、その上、副作用も全く出ていないと言います。

「私たちはずっとモモの血液化学検査を行ってきましたが、何も悪いものは見つかっていません。」と、Richardson氏は説明しています。

この研究者は、1匹の犬を対象にした実験は何かしらの化学的データを証明するものではないものの、マーモセットと呼ばれる小さなサルにラパマイシンを与えた際も同様に、悪い副作用は全く見られなかったと付け加えています。


- 人間に対してはどうか?
健康な人間を対象にしたラパマイシンの研究は、数が非常に限られています。
ノバルティス社により218人の高齢ボランティアにラパマイシンが投与された研究では、インフルエンザワクチンへの反応性が20%向上しています。

この研究結果により、加齢によって自然に発生する免疫機能の衰えに対して”ラパマイシンによる有益な作用がある可能性が上昇した”と、研究著者らは記載しています。

彼らは、ラパマイシンの副作用は”比較的良好な耐容性を示した”としています。
研究者らは、深刻な副作用は、研究中プラセボ(偽薬)を投与された患者と”同様の”確率で発生したと記述しています。

低用量のラパマイシンを服用した53人の患者の内、22人に副作用が現れ、そのほとんどが口内炎でした。

ラパマイシンのような薬に関して独自の研究を行ったMonica Mita博士は、こうした副作用は管理可能であると考えています。

「本当に必要なのは、適切な用量を使用し、患者の状態に目を光らせておくことです。」と、ロサンゼルスにあるセダース-シナイ病院で実験治療学の責任者を務めるMita氏は述べています。


- ラパマイシンの未来
ワシントン大学で病理学の教授を務めるKaeberlein氏は、本記事の掲載について心配しているようでした。

彼は、モモとシェルマンの物語は、あくまでも2匹の犬のお話であり、科学的証拠を示している訳ではないことを知ってほしいと考えています。
特にプラセボ効果を考慮すると、モモとシェルマンの飼い主はラパマイシンを強く信用しており、ラパマイシンを得るために苦労したという経緯があるため、無意識のうちに彼らが見たい現実を見ていた可能性があるのです。

Kaeberlein氏は、モモとシェルマンの成功したように見える体験により、”犬の飼い主が獣医師にラパマイシンを要求する”ことを奨励することは避けたいと感じています。

また、米国高齢化協会(American Aging Association)の理事も務めるKaeberlein氏には、別の心配事もあります。

彼は、蛇油のセールスマンが若返りの泉を歩き回っているというイメージを思い起こさせるため、”アンチエイジング”という用語が好きではありません。

代わりに彼は、認知症や心臓病といった加齢による病気の発症を遅らせるための治療法という観点から考えることを好みます。
マウスに対しては、ラパマイシンは2つの種類の低下、及びその他いくつかの点に関する低下を遅らせることが示されています。

来年中には、Kaeberlein氏はラパマイシンをさらに多くの犬、約150匹に対して使用する研究を行い、過去に彼が行った16匹の犬に対する研究と比較したいと考えています。

彼は、人間に対するラパマインを用いた老化研究を行う団体もいくつか存在していると言います。

半世紀以上前にこの化合物が南太平洋にある島の土壌から発見されてから、長い時が経ちました。

「ラパマイシンにまつわる物語はこれまでの医学史の中で最も驚くべき、興味深い、満足のいく、ユニークな話のひとつです。」と、Mita氏は5年前の医学雑誌にて記述しています。
「この物語は、まだまだ終わりそうにありません。」

出典:2016年10月7日更新 CNN News 『This pill could make your dog (and maybe you) live longer』 (2019年6月18日に利用)
https://edition.cnn.com/2016/10/06/health/rapamycin-dog-live-longer/index.html